一定の要件を満たすと受給できる障害年金。申請には医師の診断書が必須となる。障害年金を受給できれば経済的な不安は解消される。だが、新卒で勤めた“ブラック企業”のせいでうつ病になった25歳男性の両親は、「一度受給すると本人が再び働き出そうという気持ちがなくなってしまう」と危惧し、当面は申請しないことを決めた。すべては息子のひきこもり状態を変えるためだというが――。

就活した入った会社はブラック企業まがいで、うつ病に……

ひきこもりの人の中には、精神科に通院していて精神疾患と診断されている方もいます。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz)

関東地方に在住の山本卓也さん(仮名・25歳)もその一人です。大学を卒業後、いったんは就職したものの、ブラック企業まがいの厳しい営業ノルマについていけず、入社数カ月で自宅にひきこもるようになってしまいました。社員を追い立てるような企業ばかりではありませんので、気を取り直して、自分に合った勤め先を探せばよかったのですが、すっかり自信をなくした山本さんは、就職活動もせずに自室に閉じこもるようになってしまいました。

それから2年の月日が過ぎましたが、働けない状況は変わりません。気持ちの落ち込み方が激しいので親が精神科クリニックに連れて行き診察してもらうと、うつ病との診断を受けました。父親が定年を迎えたということもあり、両親が今後の家計の見通しはどうでしょうかと、心配顔で相談にやってきました。

山本さんの家族構成や資産状況、年収は以下の通りです。

◆家族構成
父親:60歳(会社員) 年収300万円
母親:55歳(公務員) 年収500万円
本人:25歳(無職)
◆資産
預貯金:4500万円
自宅:一戸建て(持ち家)※住宅ローン完済

仕事ができないなら「障害年金受給」という選択肢も

将来の家計状況を分析すると、両親が存命の間は親が受給する予定の年金額が多く、本人に収入がなくても問題はありません。しかし、このままずっと収入を得られなかった場合は、両親亡き後に貯蓄の取り崩しが続きます。やがては家計が破綻することが予想され、何らかの対処が必要です。

本人が仕事をできないようなら、国民のセーフティーネットである障害年金(体に障害のある人だけでなく、うつ病などの精神障害や、糖尿病、がんなどの病気によって、一定の障害がある人に支給される)を受給するのがもっとも効果的です。私はご両親にこう話しました。

「障害年金の受給を申請されてみてはいかがでしょうか? 現在、精神疾患と診断されて通院を続けているとのことですので、主治医の先生に診断書を書いてもらうことが可能でしょう。申請は自分でもできますが、不安でしたら、社会保険労務士に手続きを依頼されるのもよいでしょう。なんでしたら、障害年金の申請を得意とする社労士の先生をご紹介しましょうか?」