障害年金受給で回復しようという気持ちを抑えてしまう

一方、障害年金を受給すると、回復しようという前向きな気持ちを抑えてしまうのでは、という懸念があるのも確かです。仮に、その後、症状が改善され、普通に仕事ができるようになると、障害年金が打ち切られることになるからです。病状が回復すると収入がなくなり、経済的な不安が生じるのであれば、回復しようという意欲を持てなくなってしまいます。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/TARIK KIZILKAYA)

さらに、一定の収入があることで、現状に満足して変化(=回復)を拒んでしまう可能性もあります。ひきこもりに限らず、誰にとっても生活の変化はストレスになるものです。

ある程度の収入があり、なんとか生活していけるのであれば、精神的な負担になる変化を避け、今の状態を維持していきたいという気持ちになるのも自然な成り行きです。

私はファイナンシャル・プランナーとして、各家庭の将来の家計の状況を分析します。その立場から、収入は少ないより多いほうがよく、障害年金を受給できるものなら当然のことながら受給すべき、と考えていました。

診断書を書いてもらう主治医の中に、障害年金の受給に否定的な考え方の人がいるということは聞いていましたが、「収入は働いて得るべき」という理解が不十分な固定的な価値観によるものではないかと疑っていました。

理想は「子供の状況が回復し、社会になじめるようになること」

しかし、そうではないケースも多いのです。

障害年金の受給に否定的な意見の医師は、受給することでのマイナス面を懸念されてのことだったのでしょう。あるいは、患者の状況や年齢に応じて、申請のタイミングを見計らうことを勧めていたのかもしれません。

ひきこもりや精神疾患の子供がいる家族にとって一番望ましいことは、子供の状況が回復し、社会になじめるようになることです。その結果、働くことができるようになり、人並みの収入が得られれば、家計の状況も改善します。目先の収入増を見送ったとしても、本人の回復につながることを考えるほうが大切です。山本さんの言葉は、私に新たな気付きを与えてくれました。

「再雇用で、私もあと5年は今の職場で働けます。妻もまだ現役で、当面は二人に収入があります。5年後には息子も30歳です。その時点でも今と変わらないようなら、障害年金の申請をしようと思います。それまでは、なんとか働けるように頑張ってみようと、息子とも話をしました」

父親は、そう言葉を続けました。

障害で働けないのですから、障害年金を受給することは、何ら恥じることではありませんし、申請することを後ろめたく感じる必要もありません。障害年金は、収入がない人の生活を支えてくれます。山本さんが申請を見送ったのは、息子さんが収入を得られなくても生活に支障がない程度の余裕があったからです。

家計の状況が厳しければ、主治医の先生に事情を話して、協力をお願いするのも1つの方法です。また、今のところは家計に問題がないということで、受給する年金には手を付けず、将来に備えた貯蓄にしている家庭もあります。今働けないからこそ、将来の備えは大切です。

もし、この山本家と似た家庭環境の読者がいらっしゃったら、ひきこもる本人と相談しながら、障害年金の申請をどうするか、受給する年金をどのように扱うかを考えるといいでしょう。障害年金を受け取る権利は、あくまで本人にあり、支給された年金は本人のものです。親が勝手に決めることはできません。本人とよく相談しながら考えていくべきでしょう。その相談が、本人が将来を考えるきっかけにもなります。

障害年金を受給すると、家計の状況はかなり改善します。ただ、家族にとっての最終的な目標は、本人の状況が改善し、障害年金が支給停止になるような状態になることです。「お金がもらえなくなること」を前向きに考えられるようであれば、障害年金が回復の一助になることでしょう。

(写真=iStock.com)
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