※本稿は、島田直行著『社長、辞めた社員から内容証明が届いています』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
うつ病への対応が後回しになる3つの理由
「社員がうつ病で長期離脱している。どうしたものか」
こういう相談がこのところ増えている。中小企業でも10社に1社くらいは社員がうつ病をはじめとしたメンタルヘルスに支障をきたして休職しているケースがあるような印象を受ける。
即断即決を旨とする社長でさえ、「うつ病」という言葉を耳にするだけで、たじろいで身動きが取れなくなってしまうときがある。なにから手をつければいいのかわからないまま、「様子を見よう」ということになり、いつまでも状況が変わらない。膠着状態が続いた挙げ句に社長が判断を誤ってトラブルになることがある。
典型的なのは、長期間の離脱を理由にした退職の勧めに応じないから解雇するというものだ。こんなことでは明らかな不当解雇になってしまう。病気のために苦しんでいる社員にさらに精神的苦痛を与えることになりかねない。
社員のうつ病について、社長の対応が後手に回る理由は3つある。
その1 プライバシーに関わる部分として問題を先送りしてしまう
個人の病歴といったものは、プライバシーに直結するものであり、誰しも隠したいものだ。これがうつ病をはじめとした精神疾患であれば、なおさら「周囲に知られたくない」という気持ちにもなるだろう。社長としては、そういった個人のデリケートなところにどこまで介入していいのかわからない。
たとえば、「様子がおかしいから精神科に行ってみたら」とアドバイスしたら、かえって機嫌を損ねるのではないかと危惧する。結果として「なにもしないことがとりあえずいいだろう」ということになり、問題は先送りになってしまう。
その2 うつ病の原因が会社にあるのかわからない
うつ病については、その原因がはっきりしない。これが作業中に骨折したというのであれば、仕事と骨折の関係は一目瞭然だ。会社としては労災事故として対応していくことになる。しかし、うつ病の場合には、それほど簡単ではない。仕事の負担が原因かもしれないし、あるいは家庭の事情が原因かもしれない。いずれの事情も合わさってのことかもしれない。原因を特定しようにも、「かもしれない」という部分があまりにも多い。その上、個人差の影響もある。打たれ強い人もいれば、そうでない人もいる。