社員がうつ病になる前にやらなくてはならないこと

就業規則は、会社と社員のルールである。社員がうつ病になったときにどのように対応するべきか定められているか確認していただきたい。とくに確認していただきたいのは、復職する場合の扱いだ。「読んでもよくわからない」というのであれば、就業規則としての意味がない。いまだに社員のうつ病に対応していない就業規則が少なくない。それではルールがないのと同じである。会社の見解を主張するのが難しくなる。

ルールは事前に決まっているから意味がある。社員がうつ病になった段階でいきなり就業規則を整備したら、事後的にルールを定めるようなもので社員から反感を買うのは必至だ。法的にも無効という判断がなされる可能性が高い。したがって、就業規則は社員がうつ病になっていない段階で整備しておかなければならない。

多くの社長はセミナーなどに参加して納得しても、「いい話を聞いた」で終わってしまい、実際の行動に至らない。「これまでうつ病の社員なんていないから大丈夫だろう」という意識があるのだろう。だから、いざ社員がうつ病になると、あわてることになる。

社員がうつ病になるかどうかなど誰にもわからないことだ。だからといって、わからないからコストをかけてまで就業規則を見直さないという考え方は間違っている。できる社長は、わからないところだからこそコストをかけて対応を決めている。

就業規則に関して言えば、社員への周知も必要だ。いくらルールを作っていても知られていなければ意味がない。「就業規則を作りました。社員にわからないよう金庫に保管しています」では就業規則としての効力もない。就業規則を変更するのであれば、専門家に依頼して手続を踏んだ上で社員への周知を徹底しなければならない。裁判では、就業規則を事務所内の誰でも手に取れるところに置いていたとしても、「そんなものはなかった」と争われることがある。周知をした記録も確保しておくべきだ。

うつ病の治癒はどう判断する?

社員がうつ病になり、仕事が難しくなれば休職になる。社員の治療をしっかりフォローするのも社長の役割だ。

うつ病は、治療期間が長期間に及ぶ傾向がある。いったん改善したとしても、再発する可能性がある。仕事から離れると元気だが仕事になるとうつ症状が出てしまうということもあるようだ。

うつ病については、骨折などと違って治癒したかどうかについて客観的に判断することができない。基本的には本人からの聞き取りなどによって症状を判断せざるを得ない。これは復職の時期についても影響してくる。「軽微な仕事なら可能」という診断書が提出されるときがあるが、なにをもって軽微な仕事なのかは判然としない。

とりあえず社員が無理せずできる仕事が軽微な仕事とされるときがある。これではトートロジーのようなものであって、解決にはなっていない。

社長としては、このようなうつ病の特性を理解した上で、対応を検討していかなければならない。