休職期間中のパチンコはなぜ問題ないのか

休職期間に関してポイントになるところに説明を加えよう。

休職期間中の給与については、就業規則の定め方による。無給となっている場合が中小企業の場合には多いだろう。社員としては、申請すれば加入する健康保険から傷病手当を受け取ることができる。無給であったとしても、個人負担の社会保険料は発生する。会社としては、この点もあらかじめ通知して支払い方法を確認しておく。社員のなかには、「無給なのに社会保険料の支払いを求められるのはおかしい」と苦情を述べてくる人もいる。

休職期間終了時のことも忘れずに説明しておくべきだ。いつまで休職期間があるのか。休職期間中に復職できなかったらどうなるのか。社員の地位にも関係することであるから事前に説明しておくことが社長の責任だろう。いきなり「休職期間中に復職できなかったから退職です」と言われたら、誰でも驚くし怒りもする。

休職期間中の社員の状況は、会社としても把握することができない。社員の状況を把握しておくことは、社員の復職を検討する上でも必要なことだ。社員には定期的に状況を報告してもらうように伝えておこう。

こういったことは「そんなこと聞いていない」と社員から事後的に批判されないために休職開始時に書面で伝えておくべきだ。

休職期間に関する相談でときどきあるのは、「うつ病で休職している者が平日にパチンコに行っていた。懲戒できるか」というものだ。社員は、休職により労働の義務から解放されているのだから、パチンコに行っても問題にならない。したがって、こういう場合には懲戒することはできない。

かつて上司が休職期間中の部下のことを思うばかりに、熱心に復職を促した行為が違法とされ、損害賠償が認められた判例もある。

社長は、休職期間については、社員が治療に専念する期間ととらえるべきだろう。

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島田直行(しまだ・なおゆき)
島田法律事務所代表弁護士
山口県下関市生まれ、京都大学法学部卒。山口県弁護士会所属。「中小企業の社長を360度サポートする」をテーマに、社長にフォーカスした“社長法務”を提唱する異色の弁護士。特に労働問題は、法律論をかかげるだけではなく、相手の心情にも配慮した解決策を提示することで、数々の難局を打破してきた。これまで経営者側として対応してきた労働事件は、残業代請求から団体交渉まで、200件を超える。
(写真=iStock.com)
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