長女「いつかは一人で生きていくことになるので……」

母親の心情を察すると、親亡き後の問題点が残っているという理由だけでなく、この先、自分が生きている間、経済的にも精神的にもギリギリの生活を続けていかないといけないという疲労感が表情に出ているように思えました。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/TARIK KIZILKAYA)

長男は、母親との同居も考えており、このことに関して妻や子供も承諾しているようです。また、年金や少額の貯蓄も手元に残るので、経済面で長男に大きな負担をかけることもなく、ご自身の介護にも備えることができそうです。長女へも少しは仕送りができる余裕も出てきそうです。

そこで、筆者は長女に聞きました。

「将来、遅かれ早かれ、ご長女の生活は生活保護に頼る可能性が高いことが予想されます。例えば、マンションを売却した後、お母様はお兄様と一緒に暮らし、ご長女は生活を別にし、仕送りや生活保護で生きていくという方法もあります。お一人での生活は想像がつきますか? ご不安を感じられますか? もちろん、ご家族も、すぐに来てもらえる距離にいらっしゃいますし、何かお困りごとがあれば、福祉事務所の方もサポートしてくれます」

すると、長女はこう答えました。

「家事はなんとか自分でこなせます。また、いつかは一人で生きていくことになるので、不安はありますが大丈夫だと思います」

母親も長男もようやく少し安堵の表情を

長女は母親が仕事を辞めて以降、家計がピンチだということを知りました。ショックだったと思われますが、これまで体調を崩している母親のサポートをしてきたことで、長女なりに自信を持ち、また将来一人で生きていくための自覚も芽生え始めたのではないかと思いました。

父亡き後も気丈に働く力強い母親が少しずつ弱っていく姿を目の当りにして、心の動揺があったのでしょう。それが原因で母親にあたってしまい、親子関係を壊すような行為をしてしまう自分に対してがっかりする気持ちも抱いていたはずです。それでも長女は、「一人暮らし」に納得し、母親も長男もようやく少し安堵の表情を浮かべました。

ただ、今後のプロセスもひとつひとつしっかり踏んでいかなければなりません。

マンションを売却する前に、まず母親と長女の家計を別にし、居住地の福祉事務所に生活保護を申請し、長女の住まいを確保する必要があります。それまでに、長女の一人暮らしのシミュレーションもできそうです。

母親・妹思いの長男は、「福祉事務所に出向き、サポートを受けながら、長女が一人で生きていくための準備を進めていきたい」という言葉を残して、筆者の事務所から帰っていきました。

(写真=iStock.com)
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