「きょうだいが共にひきこもり状態になるケースは少なくありません」。ひきこもりの子供を持つ家庭から、家計相談を受けているファイナンシャルプランナーの薮内美樹さんはそう話します。両親がいなくなったとき、残された子供たちはどうやって生計を立てればいいのでしょうか。両親が70代、子供2人は40代でいずれも無職というある家庭のケースをご紹介します――。

70代両親が悩む、「48歳姉・45歳弟」のWひきこもり

今回の相談者は、79歳の父親と75歳の母親といずれも高齢です。2人とも元気な様子ですが、まもなく80歳を迎える父親が、出歩くことが少しずつおっくうになってきたことから、気がかりなお金のことを考えておきたいと思ったそうです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Instants)

「長女ひとりならなんとかなると思っていたのですが、長男までひきこもりになるとは……。計画が狂ってしまいました」

父親は力なさげに話し始めました。

長女(48)は、10年ほど前に、うつ病と診断され障害年金(2級)を受給中です。強迫性障害があり、モノに触れられないため、仕事が長続きせず、ほとんど家で過ごしています。

長男(45)は大学卒業後、20年近く営業の仕事をしていたものの、本社勤務になって以降、精神的なプレッシャーなどから体調不良が続きました。結局、3年前に仕事を辞めて実家に戻ってきました。まだ、働く意欲は失っていないものの、営業マンとして第一線で働いてきた自負があるのか、「中途半端なところで働きたくない」という気持ちが強いようです。逆にそれが足かせとなり、なかなか次の一歩を踏み出せない状況です。

両親の貯蓄は2500万円だが「子供2人分」に足りるのか?

長女は両親と同居をしていますが、長男は、祖父母が生前住んでいた実家近くの家にひとりで暮らしています。食事や入浴のために毎日、実家にやって来ますが、光熱費が2重にかかったり、車で行き来したりするため燃料費など出費がかんさんでいます。

当初、長男は、すぐに社会復帰するのだろうと親は高をくくっていましたが、まだしばらく時間がかかりそうです。長期戦となった場合、貯蓄がどこまで持つのか不安が募ってきた、と両親は言います。そこで、家族の収入状況や貯蓄額など資産を確認しました。

◆家族の収入と資産状況
父親:79歳 年金収入月額23万円 貯蓄残高1700万円 
母親:75歳 年金収入月額5.5万円 貯蓄残高800万円
長女:48歳 同居・無職。障害年金月額6.5万円 貯蓄残高700万円
長男:45歳 別居・無職。貯蓄残高300万円
自宅不動産:2500万円(売却時の価値 ※諸費用引き後)
祖父母が住んでいた家:1000万円(売却時の価値 ※諸費用引き後)
夫 終身保険:500万円

両親とも真面目に働き、貯蓄も計2500万円とそれなりに残しています。持ち家もあります。しかし、両親の収入は現在、年金だけ。ヒアリングを進めていくうちに意外な支出が次々に出てきました。