78歳の母と49歳娘の2人暮らし。母は老人ホームへの入居を望むが、娘は引きこもり気味の無職で、施設に入れば家計が維持できない。どうすればいいのか。相談を受けたファイナンシャル・プランナーが提案した「活路」とは――。

「私が老人ホームに入っても、長女の生活は大丈夫ですか」

ファイナンシャル・プランナーの私は、ひきこもりの子どもを持つご家族からの相談を多く受けています。その中で、ひきこもりの子が今後、就業できなくてもなんとか生活していけるようにアドバイスをしていますが、逆に、私が教えられることもあります。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/middelveld)

例えば、山本(仮名)さん母娘です。父親は3年前に他界し、現在は78歳の母親と49歳の長女の2人暮らし。長女は仕事をしておらず、母親の老齢年金と父親の遺族年金(合わせて年205万円)、そして貯蓄(2400万円)を取り崩しながらの生活です。他に兄弟姉妹はおらず、自宅(持ち家)もあるので、父親が遺してくれた貯蓄で何とか生活はできていますが、そろそろ母親に介護が必要な状況になってきています。そこで、「老人ホームに入居しても、その後の長女の生活に支障はないか」という相談を受けたのです。

もともと長女は就職した後、結婚し、親としても一安心という状況でした。しかし、子どもができないうちに夫婦関係は破綻し、離婚しました。その後は仕事もうまくいかなくなり、転職を繰り返すようになってしまいました。

40歳になって実家に戻ってきたものの、折からの不況で就職活動はうまくいかず、無職の期間が長くなりました。そうなると、すっかり自信をなくし、就職活動にも身が入りません。50代を目前に、気がはやるばかりで、何も手につかない状態になってしまいました。まったく外出できないわけではないのですが、最近は家に閉じこもりがち。メンタルクリニックには通院していますが、障害年金に該当するほどではありません。それだけに、経済的には厳しい状況です。

貯蓄2400万円を取り崩しながらの生活

<山本家(仮名)の状況>
母親:78歳。年金収入が月10万円。そろそろ介護が必要になっている。
長女:49歳。無職。離婚、退職をして、実家に戻る。無職期間が長引く。
・父親は3年前に他界。他に兄弟姉妹はいない。
・貯蓄:2400万円。持ち家に2人暮らし。

私は、ご家族からうかがった情報をもとに、将来の状況を推測し、家計のシミュレーションを行います。お子さんがひきこもりや無職の場合は、お子さんの平均寿命まで試算します。仮にお子さんが働けなくても、生活費に窮することなく生涯をまっとうできるかを確認するためです。

もちろん、親としては、立ち直って就職してほしいでしょうし、本人もそれを望んでいます。そうなれば悩みは解消に向かいますが、私は、「最悪の状況」になっても家計に支障がないかを見ていきます。