長女は1200万円、長男は2550万円の生活費が足りない

長女は、あまり外出しないため、おこづかいや被服費などはかからないものの、強迫性障害により、1日に何度も手を洗ったりシャワーで体を洗ったりするのに水道代が高額となることや、除菌関連の日用品代がかかることが予想されます。

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また、実家は、1人で暮らすには広すぎることや、何よりも、姉弟の生活資金を捻出するために売却を検討する必要があるため、住まいは賃貸を前提とします。家賃代を考慮し、月額の生活費は13.5万円とします。長女には障害年金が6.5万円あるため、毎月の収支は赤字7万円ということになります。

母親が85歳時点で高齢者施設に入り、長女の1人暮らしが始まるとして本人が58歳~90歳までの生活費を計算すると、必要資金は約2700万円と算出されます。ただ、長女は、10年前から受給している障害年金を全額貯蓄していることや、58歳までの受給分を考慮すると、1500万円は準備できるため、残り約1200万円必要ということになります。

一方、長男はどうでしょうか。長男は自炊ができるため、食費はそれほどかからないものの、自動車関連費がかかります。住まいは、祖父母の家に住み続けたほうが費用は抑えられるため、住居費はかからない(固定資産税のみ)とすると月額の支出は12.5万円程度と推測されます。なお、両親が健在なうちに最低限必要な修繕はすませておくこととします。

長男は現在、無職のため、ライフプランでは今後も収入がないという前提で計算します。国民年金保険料は、60歳まで未納がないものとすると、65歳から受け取れる年金は厚生年金と合わせて120万円程度です。国の施策変更などで年金支給額が2割ほどカットされた場合に備え、96万円とすると月額約8万円程度となります。

母親が85歳の時に1人暮らしが始まるとして、長男55歳~90歳までの分で計算すると、必要資金は2850万円と算出されます。長男が働いていた時に貯めていた貯蓄残高が300万円ほどはあるので、あと、2550万円足りないことになります。

整理すると、必要な資金は長女が1200万円、長男が2550万円です。

預貯金と自宅売却で不足分3750万円を補填する予定

では、親が子供に遺せる資産はいくらか。預貯金が1300万円、自宅不動産の売却見込額が2500万円なので、ギリギリ姉弟2人が生きていくだけの資産を遺せそうだということが判明しました。

この試算の結果を知った父親は言います。

「2人分の資金を遺すなんて到底できないと思っていましたが、自宅売却という考えがあったのですね」

両親は、とりあえず、資金面でなんとかなる可能性がでてきたことを知り、ホッとした様子でした。