技術革新によって劇的に下がった印刷コスト。今ではそれなりのクオリティの印刷物も格安で発注できる。「速く、安く」が主流となった印刷物市場の縮小によって、廃業に追い込まれる印刷工場も少なくない。
そうしたなかで、あっと驚く紙加工と美しいカラーが効いたユニークでアーティスティックな商品がヒットし、各界から熱い注目を浴びているのが東京・立川の福永紙工だ。厚紙印刷と型抜き加工が得意な強みを活かし、紙加工のニュースターとなった。中沢孝夫・福山大学経済学部教授が解説する。
今あるものを活かし、外の視点を取り込む
JR立川駅から車で数分。外観はどこにでもありそうな工場で印刷機や紙加工機械がガチャンガチャンと動く工場内も一見、よくある光景だ。しかし、刷り上がってくる名刺や商品パッケージは洒落ている。
「本音を言えば、会社の中に自分の居場所をつくりたかったんですよ」
工場の隣に2017年つくったイマドキの空気感を漂わせるショールームで、山田明良社長は笑顔で言った。
「この方向性が必ず売れる! と確信して始めたわけではなくて。後付けでもそう言えたらいいのですが、要は少しずつ好きなことをやったら、意外と受け入れられたんです」
アパレル業界にいた山田社長が福永紙工に入社したのは結婚がきっかけ。妻の実家の家業を継いだ、いわば“婿社長”の2代目である。