2020年春、イケアの新店舗が原宿駅前にオープンする。広さは通常の店の10分の1程度。なぜこのタイミングで都市部に「狭小店」を出すのか。流通アナリストの渡辺広明さんは「ライバルのニトリをはじめ、郊外型店舗の都市回帰が進んでいる。狙いはネット通販の客の取り込みだ」と説明する――。
2014年開業のイケア立川店。東京都内初出店となった(写真=iStock.com/GOTO_TOKYO)

初の東京23区内出店

2020年春、原宿駅から徒歩1分の複合ビルに、家具量販店「イケア」の新店舗がオープンする。

イケアは現在、日本国内で9店舗を展開している。いずれも都市部からは離れた郊外に建てられており、客は車やシャトルバスで店舗を訪れ、広々とした店内を回遊して商品を探す。郊外型大型店の代名詞的存在だったイケアにとって、これが初の東京23区内への出店となる予定だ。

店舗面積は2500平方メートルになるとされており、既存店でもっとも広い新三郷店(埼玉県三郷市/2万5725平方メートル)の10分の1程度。そのほかの既存店と比べても格段に小さい。なぜ今イケアは都心初出店に踏み切ったのか。

出店予定がそのままになった土地も

イケアが日本に初上陸したのは2006年。以来、北欧の洗練されたデザインと、客が自分で持ち帰って組み立てるセルフサービスの珍しさ、それに由来する価格の安さで人気になった。だが、日本法人イケア・ジャパンの業績は好調とは言えない。

決算公告によると、2015年度以降、売上高は漸減しており、2017年度は741億円。2018年度は840億円で前年比14%の増収となったが、営業損益は依然として9億円の赤字だ。まだ売上高が伸びていた2014年に「2020年までに全国14店体制を目指し、売上高を2倍にする」と方針を発表していたが、このままでは厳しそうな状況だ。

2013年時点で出店が予定されていた広島県広島市や群馬県前橋市ではその後なんの動きもなく、前橋市の建設予定地には長らく「IKEA」の看板が寂しくたたずんでいる。増やすどころか、今年7月には九州2号店の「IKEA Touchpoint熊本」を開業からわずか3年で閉店した。

イケアは店頭販売にこだわりを持ち、インターネット通販は行ってこなかった。2015年にようやく欧米で公式ECサイトが立ち上がり、日本では2017年4月にスタート。これは大きな出遅れだ。