「家具・インテリア」通販は伸び盛り

経済産業省が2017年に行った調査によれば、物販系の国内EC市場において「雑貨・家具・インテリア」は市場規模が1兆4000億円を突破し、前年比で最も高い伸び率を示すカテゴリーとなっている(「平成29年度電子商取引に関する市場調査」より)。

今回、都心への出店に踏み切ったのは、こうした状況の中でECサイトでの購買を活発にするショールーミングのための店舗をつくることが狙いだろう。

店舗で確認した商品をその場で買わず、価格を比較してネット通販で購入するショールーミングは、ECサイトが勃興し始めて以降、小売業にとって対策の難しい悩みだった。それに対し、2015年にセブン&アイホールディングスが「オムニチャネル」戦略を推進し始め、ショールーミングを逆手に取ったネットとリアル店舗の融合に小売業大手各社が取り組むようになっていった。

ニトリは店内にタブレット端末を設置

国内家具小売業最大手のニトリも、2015年からこの動きに乗っている。マロニエゲート銀座店(東京都中央区)を皮切りに、池袋・新宿・目黒・渋谷・上野・中目黒などに都市型店舗を続々と出店している。

店内にはタブレット端末が設置され、客は手にとって商品を検索できる。「ソファ」「ベッド」といったカテゴリーから検索する方法と、端末に添えられたスキャナーを使ってバーコードから検索する方法がある。商品の詳細情報からQRコードを印刷して自分のスマホから注文するか、注文カードを印刷して店員に依頼する。近隣の店舗の在庫状況も確認でき、「どうしても今日買って帰りたい」という客にとっても便利な仕組みとなっている。

ニトリ店内の端末を使うと、QRコードが印刷できる(撮影=プレジデントオンライン編集部)

これまではニトリもイケア同様に郊外型店舗をベースに、車で来店する客をターゲットとしてきた。だが、大都市圏の有職女性の大半は車を持っていない。また、消費の中心となる高齢者も免許返納者が増えている。そんな社会環境の変化をにらみ、ターミナル駅を中心とした街中への出店攻勢をかけているのだろう。こうした連携強化の結果、ニトリの通販売上高は右肩上がりだ。2018年2月期は305億円に到達し、前期比35%増を記録した。

ただし、実際に筆者がニトリの店舗を訪れて店員にタブレット端末についてたずねてみたところ、店内のどこにあるのか明確に答えられないケースもあった。店内にしばらく滞在してみても、あまり頻繁に利用されている様子は見られない。まだまだ広く浸透しているわけではないのだろう。