コンビニの人手不足が深刻になっている。このためチェーン各社は、業務負担の少ない店づくりを進めることで、従業員の定着率を上げようとしている。流通アナリストの渡辺広明さんは「セブン‐イレブンの新しい陳列棚は、棚ごと引き出せるので『先入れ先出し』が非常にやりやすい」という――。

人手不足対策で省力化に取り組む

人手不足が深刻化している中で、いまコンビニ各社は「省力化」に熱心に取り組んでいる。

業界1位のセブン‐イレブンは、今年3月以降の新店や改装店に、新たなスライド式陳列棚を導入し、既存店も順次切り替えると発表した。

これまで商品陳列棚の段は動かせず、並べてある商品を避けながら、その後ろに補充商品を入れていた。「先入れ先出し」と呼ばれる陳列の基本だが、手間がかかる。特に下段は作業がしづらく、掃除も行き届きにくかった。

今回導入される新しい棚は、一段ごとにスライドして前に出てくるため、この作業が著しく簡易化されるのだ。

導入される新しいスライド棚(写真提供=セブン&iホールディングス)

商品補充の時間が1時間40分削減できる

コンビニ従業員の作業時間の内訳で、レジ接客に次いで長いのが品出しだ。十分な商品が並んでいるかどうかは、店舗のクオリティを大きく左右する。だが最近は、ホットスナック類が増えて調理が必要になったり、ネット通販の受け渡しがあったりと、カウンター業務がとにかく増え、品出しの時間が圧迫されてきている。セブン‐イレブンによれば、新たなスライド棚の導入により、商品補充にかける時間は1日で約1時間40分の削減となるという。

この棚の実力を測るため、セブン‐イレブン本社の地下1階に入る「セブン‐イレブン千代田二番町店」を訪ねた。店員目線でいうと、スライド式は陳列が楽なだけでなく、ホコリのたまりやすい棚奥の掃除も簡単で、「効率が上がる」と確信できた。

「セブン‐イレブン千代田二番町店」は次世代型モデル店舗だ。同店では、手前の商品がなくなると自動的に次の商品が押し出される機能を備えた仕切り板や、フィルター部分に取り付けて滑らせるだけでフィルター清掃ができるスライド式ブラシなど、多くの新しい設備や技術を採用しており、1日あたり5.5時間の作業時間削減に成功している。