病気、介護、お金、片付け、空き家、お墓……。「実家」のさまざまな問題を解決するにはどうすればいいのか。「プレジデント」(2017年9月4日号)の特集から処方箋を紹介する。第9回は「空き家リスク」について――。

売る、貸す、維持、ベストな選択肢は?

空き家問題は、一人暮らしの高齢者が、入院・死亡・施設に入ったときからはじまります。子供は家も仕事も持っているから、実家には戻ってこない。そこで空き家が発生するのです。放置すると特に深刻なのが、マンションより一軒家の場合。

写真=iStock.com/Masaaki Ohashi

戸建ての実家が空き家になったときの選択肢は3つ。「売る」「貸す」「維持する」です。ただし、貸すことはおすすめしません。多くの空き家は、近隣の賃貸アパート相場よりも安い金額で貸し出されます。そのため、収益が少ない。さらに、貸し出すと借地借家法が適用になるため、持ち主に修繕義務が発生します。築40~50年の家は、雨漏りや配管のつまり、外壁の傷みが出てくる可能性が高いのでリフォーム費がかさんでしまいます。

私はこれまで270軒以上空き家の管理にかかわってきましたが、実家が空き家になった最初の1~2年は、頑張って維持しようとする人が多いです。幼少期や両親の思い出があるので、いきなり売却の決心はつかないのでしょう。しかし、途中で疲れ果ててしまうんですね。なぜかというと、空き家を維持するには大変な労力とお金がかかる。瓦や外壁の交換といった修繕費用や固定資産税などすべて合わせて年に30万~50万円くらいは必要です。

空き家の維持はとにかく大変。こまめに手入れをしなくては、すぐに廃墟と化します。まずは3日でカビ臭くなり、5日で中に入るとムッと異臭を感じるようになる。これを防ぐには、1カ月に10分でもいいから窓を開けるなどして換気することです。とはいえ、実家が遠方にあると、1カ月に1回様子を見にいくのも大変です。ついつい、足が遠のいてしまう。

放置すると、異変は次々と起こります。梅雨時の雨漏りや、雪が降る地域だと軒先の瓦が割れることもあります。台風が来れば、強風で何かが飛んできて外壁が破損することも。修繕費用がもったいないといってそのままにしておくと、家に穴があいて、生き物が侵入しはじめます。小さい虫や動物が入り、そのうち3センチでも穴があけばハクビシンが入ってくる。ハクビシンは、家の中に糞のタワーをつくるから厄介なんです。他人が住み着いたり、不良の溜まり場になる例もありました。