親に離婚歴はないか、親の不動産は多いか
相続時のもめごと、いわゆる“争族”は、家族間の感情のもつれが主な原因だ。「長男が多くもらうのは許せない」とか「次男は住宅購入資金を援助してもらったはずだ」など、他の相続人と比較して「自分がないがしろにされた」と感じるときに争いが起きる。
相続に関する著書も多い弁護士の長谷川裕雅氏は、「争いの原因で最も多いのは、その財産が相続財産かどうかという問題」と言う。
たとえば、長男が資金を出して購入した不動産を父親の名義にするケースは意外に多い。実質は、長男固有の財産だが、他の相続人が異論を唱えれば民事訴訟に発展するケースもある。
相続財産が自宅不動産以外にない場合もモメやすい。不動産のままでは分割しにくいし、売却するには時間がかかる。さらに、売却してしまうと残された母親が住む場所がなくなってしまうという問題が生じることも。これを避けるため、生前に父親から母親に自宅を贈与するケースもある。そのような対策をせずに父親の相続が発生すると、自宅も相続財産として分割対象になる。このため、婚姻期間が20年以上の夫婦間で贈与された居住用の建物について、法務省は特別受益における持戻しの免除の意思表示があったと推定する(※)ことを民法改正案として検討している。
※配偶者に贈与した居住用の建物は遺産分割の対象から除かれるということ
親に離婚歴がある場合も注意が必要だ。前の配偶者との間に子どもがいれば、その子どもには相続権がある。一方、連れ子は相続人にならない。どんなに親の面倒を見ても、相続権はなく、これもまた争いの原因になる。
争いを回避するには遺言が有効だとされるが、「そう簡単な問題ではない」(長谷川氏、以下同)。
なぜなら、危機感を抱いているのは、これから相続人になる子世代であって、被相続人になる親世代ではないからだ。
「遺言を書く人はごく一部にすぎませんし、書いたとしても、親が子に頼まれたケースが多く、特定の子に有利な遺言が作成されることになり、余計にモメごとのもとになる」