遺言でも侵すことのできない「遺留分」という権利が相続人にはある。相続人が子ども2人の場合であれば1人あたり相続財産の4分の1が遺留分。配偶者と子ども2人の場合であれば配偶者は相続財産の4分の1、子ども1人あたりは相続財産の8分の1になる。遺留分を侵害する内容の遺言も有効ではあるが、遺留分を侵害された相続人の感情を逆なですることになる。

「遺言より生前贈与を活用したほうが有効だ」

一般的に相続税よりも贈与税のほうが税率は高いので、税額を比べて実行する必要はあるが、親が自分の意思で特定の子どもに贈与すれば、他の子どもも不満を言いにくい面がある。

相続発生後に相続人全員で財産の分け方を話し合う「遺産分割協議」で話し合いがまとまらないと、いつまで経っても遺産分割が完了しない。遺産分割に期限はないが、時間が経てば経つほど、さらにこじれるのは確かだ。

夫の親を介護しても、相続権が一切ない妻

親の介護でモメることも多い。典型的なのは、長男の妻が義理の父母の面倒を看ていたケース。連れ子と同様、妻は相続人ではないため、どんなに親身になって介護しても、相続権はない。

「長男にとって、妻は家族であるが、他の兄弟姉妹にとってみれば他人も同然。この意識の違いがモメごとを複雑にする」

妻の貢献に報いるには、養子縁組という方法がある。妻を父親の養子にすることで相続人に加えることが可能だ。相続人が増えれば、基礎控除額も増えるので節税にもつながる。

他の兄弟姉妹にとってみれば、自分の相続分が減ることになるので異論が出ることもあるが、「ならば親の介護を代わるのか」と問うとよいだろう。