遺産分割でモメると、家族が絶縁状態になるリスクのほか、余計な税金を支払う羽目にもなりかねない。

相続税がかかる場合には、相続が発生してから10カ月以内に申告・納税をする必要がある。この期限を過ぎると、状況に応じて無申告加算税、延滞税などが課されることになる。

また、軽減措置が利用できなくなる可能性もある。たとえば、小規模宅地等の特例。これは、自宅の土地の評価額を最大8割減して相続税額を下げられる制度だ。しかし、申告期限までに遺産分割協議が調わず、誰が自宅を相続するのかが決まっていないと利用できない。この制度の適用は、一定の手続きを踏めば、申告期限後であっても3年間は認められるが、手続きをしなければ10カ月で期限切れになる。

「代々の資産家であれば、顧問弁護士や顧問税理士と連絡を取り相談している場合が多いため、最悪の事態は回避しやすい。注意したいのが、日常的に弁護士や税理士と連絡を取っていないケース。相談先を持たないため、最悪の事態に陥ることが少なくない」

長谷川裕雅
弁護士
税理士。東京永田町法律事務所代表。早稲田大学政治経済学部卒業後、朝日新聞記者を経て現職。『磯野家の相続』『モメない相続』など著書多数。