次々に建設されるタワーマンション。しかし、住宅ジャーナリストの榊淳司氏は「私の知る限り、代々東京に住む“本当の富裕層”は投資用に買うことはあっても、自分たちが住むことはない」という。なぜなのか。「プレジデント」(2018年12月3日号)の特集「『家・マンション』買い時、売り時」より、記事の一部をお届けします――。

タワーマンションは、誰が買っているのか

東京・中央区や江東区などの湾岸エリアに林立するタワーマンション(超高層マンション)。好景気を背景に、建設ラッシュが続く。現代の成功者の象徴ともいえるタワマンだが、意外なことに“本当の富裕層”にはあまり人気がないという。四半世紀にわたり不動産市場を見てきた住宅ジャーナリストの榊淳司氏は次のように語る。

建設ラッシュが続くタワーマンション●タワーマンションを購入するのは、IT関連や不動産関係者、医者が多い。(時事通信フォト=写真)

「タワーマンションを購入しているのは、基本的にニューカマーです。彼らは大学入学や就職のときに東京に出てきた地方出身者で、それなりに成功を収めた人。年収1500万円くらいになり家を購入する際に、なぜか好んで湾岸のタワマンを買う人が多い。だから湾岸のタワマンに住む人の職業は、IT関連や不動産関係が多いといわれています。しかし私の知る限り、代々東京に住んでいる“本当の富裕層”は、湾岸のタワマンを投資用に買うことはあっても、自分たちが住むことはあまりありません」

なぜお金持ちはタワマンに住まないのか。

「私はかつて20年ほどマンションの広告制作を手がけていたのですが、大手デベロッパーのタワマンの広告に携わったときに担当者から、タワマンは見栄っ張りが買うので、そういう人たちの虚栄心をくすぐるテイストの広告をつくるようにと指示されました」

お金持ちからすると、そういった売り出し方は逆に食指が動かなくなるようだ。