なぜ築古・低層でも、人気が高いのか
場所を重視するお金持ちにとって、中古物件も人気がある。榊氏は20年以上前の中古マンションは質が高く、それを好むお金持ちも少なくないという。
「特に1990年以前のバブル仕様のマンションはかなりいいです。バブル仕様とは、その頃までに完成したマンションで、当時は高くても売れましたから、床に大理石なんて当たり前。またバブル崩壊後も、2002年頃までにつくられたマンションは結構しっかりしています。ちょうど築20年くらいの物件ですが、当時は不動産不況で、デベロッパーは売れるように一生懸命よいものをつくっていました」
中古物件でも、特に「ビンテージマンション」とよばれる一群は人気が高い。売買なら億単位という高額物件がほとんどだ。
「東京のビンテージマンションの代表格と位置づけられているのが『広尾ガーデンヒルズ』です。実際に行ってみるとわかりますが、すごくいいマンションだと感じるはずです。管理面で少々問題もあるようですが、築30年以上でも、とても上品です」
「代官山ヒルサイドテラス」も低層だが高評価だという。建築家の槇文彦氏が手がけた住居・店舗・オフィスからなる複合建築で、1967年から92年まで数期に分けて段階的に建設された。
「ここは基本的に賃貸ですが、築40年ほど経っても格好いいんですよ。マンションに暮らすんだったら、一番といってもいいほど。まず、代官山は街が素敵じゃないですか。歩いていて気持ちがいい。物件が良すぎてなかなか空きは出ませんがね」
タワマンであれ、旧お屋敷街のビンテージマンションであれ、庶民には関係ないと思う向きもあろう。しかし、彼らの住宅購入に学ぶ点もあるのではないだろうか。
「あまり表面的なものにとらわれないことでしょうね。富裕層の方々は、住みたい街ランキングは気にしない。自分の好みを持っています」
なるほど大切なのは、周囲の目を気にしたりせず、自分のライフスタイルに適した、地に足のついた住居選びをすることのようだ。
※「プレジデント」(2018年12月3日号)の特集「『家・マンション』買い時、売り時」では、本稿のほか、初めての住宅購入、住み替え、実家の処分、住宅ローンの選び方など、住まいに関わる関心事を専門家が徹底検証しています。ぜひお手にとってご覧ください。