お金持ちは、何を重視するのか
では、“本当の富裕層”はどんな家を買うのか。榊氏があげたキーワードは「上品」だ。
「彼らが好むのは、落ち着いていて、しっとりとした住宅地です。基本的に9割は場所で選びます。具体的には、都内ならば代々木上原や番町、松濤、広尾、表参道などを好まれます。あの湾岸の風景は、場合によっては殺風景というか、殺伐とした感じがするんでしょうか」
こうしたお金持ちが好むエリアには、実は共通点がある。
「基本的に東京は古いお屋敷街(江戸藩邸)がいいんです。大手町、高輪、番町、文京区の本駒込や本郷、青山あたりも旧屋敷街です。これらの場所はだいたい地盤がよく丘の上にあります。富裕層の方は古いお屋敷街だからという理由で選んでいるわけではなく、結果的にそうなるだけです。とにかく見る目が肥えていますから。個人的には、東京で一番ステータスが高い住宅地は番町か表参道周辺だと思っています。山手線の外側なら代官山ですね」
上品さや見た目の善し悪しは別にして、榊氏がタワマンをすすめない理由がほかにもある。
「これはタワマンに限らないのですが、いまの新築マンションは全体的に設備・仕様がどんどん落ちています。なぜなら建築費や土地代が値上がりしているため、販売価格が高くなってしまうからです。価格を少しでも抑えるために、デベロッパーは仕様を下げるわけです。さらにタワマンの場合、建物全体の荷重負担を軽減するため軽い素材を使います。だから防音性に難がある。隣の家の生活音が聞こえることもあるほどです」
タワマンといえばハイクオリティーで申し分のない住環境をイメージするが、そう単純な話ではないようだ。
一方、こうした現在のマンション事情にあって、やはり旧お屋敷街は違うと榊氏は話す。
「そういう高級住宅街は住民の意識も高く、街の景観を大切にしています。新築マンションでも、おかしなものを建てて街のブランド力を損ねてはいけないので、デベロッパーもしっかりとしたマンションをつくります」