どの会社も顧客のニーズを掘り起こし、顧客の期待に応えようと躍起になっている。にもかかわらず、空回りしているところが少なくない。組織全体が顧客のほうを向いて行動するために、最低限必要なこととは。

多くの企業幹部やマネジャーが、顧客をあらゆる行動の中心に据えるよう部下に説いている。だが、彼らの言葉に込められた強い情熱や確信にもかかわらず、彼らの組織の中では、真の顧客重視(カスタマーフォーカス)は実践ではなく理論に留まっている。

「企業は内向きになりがちで、ともすると顧客が経験していることではなく自分たち自身の活動に注目してしまう」と、コロンビア大学の経営学准教授で、『市場破壊戦略――競争ルールを激変させる40の戦術』の共著者、リタ・ギュンター・マグレイスは言う。「当人たちは顧客に目を向けているつもりなのだが、本当はそうしていない」。

その事例として、マグレイスはある工業資材メーカーの体験を挙げる。この会社のマネジャーたちは、同社が品質をとても重視しているがゆえに、わが社はきわめて顧客中心の企業だと思っていた。ところが、彼らの「高い品質」の定義はきわめて狭かったので、ある製品を顧客が実際にどのように使用しているかが見落とされていた。この会社は、この製品を50ポンド缶で出荷していたが、顧客は通常、製造工程1回につき30ポンドしか必要としていなかった。この製品は空気に触れるとダメになるため、顧客は往々にして残りを捨てなければならなかった。マネジャーたちがもっと小さい缶で出荷することで顧客満足度を高め、売り上げを伸ばすことができたのは、自分たちの思い込みから1歩後ろに退いて、顧客が作業する様子を現場でしばらく観察してからのことだった。

では、自分の組織で顧客重視を現実にするために、リーダーは何をすればよいのだろう。まずは次の5つのことから始めてはいかがだろうか。