変革に反対する人には2種類ある。「反対のために反対」している人と、「もっともな理由に基づく反対」をしている人と。後者の抵抗勢力は、変革を成功させるための「思わぬ知恵袋」となる可能性がある。
何にでも反対する人、常に悪い結果を予想する人、どんな場合にも自分の考えに固執し、頑として譲らない人。どの集団にも必ずそういう人たちがいるものだ。彼らさえいなかったら、変革計画はどんなにスムーズに進むことだろう。
変革の案がどれほどしっかり練り上げられていようと、管理職のなかから変革に抵抗する人が出るのを避けることはできない。組織の営みには抵抗勢力がつきものなのだから、むしろ彼らを受け入れ、彼らを動かすための計画を練って、逆に彼らを愛するほうが賢明だ。
抵抗勢力を「愛する」というのは突飛な考えに聞こえるかもしれないが、実は彼らは往々にしてすばらしい価値を持っているのであり、多くの企業がそれを引き出す手間をかけないだけなのだ。
抵抗勢力を抑えるための3つのポイント
ほとんどの変革プログラムには、社員の抵抗を克服するための優れた戦略が盛り込まれている。変革は急務であるというムードをつくること、自分も参加しているという感覚や権限を与えられているという感覚を持たせること、明確なメッセージを伝えることなど、である。
しかし、これらは不可欠の要素ではあるが、個人間、あるいは小グループの中での抵抗に対しては、必ずしも効果的に対処することはできない。すべての社員から一斉に支持を得ることはできないし、そうしようとすべきでもない。
それよりも、最も効果のあるところに的を絞って、そこに力を集中することが大切だ。まず、次の3点を考えてみよう。
(1)抵抗によって最も甚大な被害を受けるのはどの分野か。
変革を進める過程で抵抗が大きな打撃を与えるおそれがあるのはどの分野か。まず、これらの分野に力を集中しよう。
(2)抵抗が波及力を持つおそれがあるのはどの分野か。
どの会社にも、自分の職責をはるかに超えて広範囲に影響を及ぼせる個人がいる。そのような人物が変革を支持していない場合には、彼らは変革をつぶすことができる。
これを防ぐ方法を1つ挙げると、変革構想の推進に彼らを最初から巻き込むことだ。
(3)抵抗が最も激しくなるおそれがあるのはどの分野か。最も失うものが大きいのは誰か。
アンケート調査は、さまざまな部署の抵抗のエアポケットを探り出す一助になる。変革に対する姿勢を探る匿名の調査でさえ、重要な傾向を明らかにすることができる。
最も抵抗が大きい分野を突き止めたら、その抵抗を理解し、それをうまく利用し、乗り越えるために積極的な措置を講じよう。