期待通りの結果を出せないマネジャーを放出したいが、新しい人を採用するのはそれ以上のリスクとコストを伴う。そんな悩みを抱えた上司がまずやるべきこととはなにか。

「できない」部下を放置する余裕はない

パフォーマンスの低い部下を大目に見ることは、率直に言って無理な相談だ。最大級の大規模組織にとってさえ、足手まといを抱えていくには予算が厳しすぎ、余裕がなさすぎ、しかも成長の必要性が大きすぎる。

仕事に追いまくられている企業幹部がえてして最初に考えるのは、パフォーマンスの低いマネジャーを放り出すことだ。どう考えてみても、彼らに対処する余裕が誰にあろう。「パフォーマンスの低い部下を管理するには途方もないエネルギーが必要だ」と、ニューヨーク州カゼノビアの通信コンサルティング会社リッジ・アソシエーツのCEO、ジム・ボルトンは言う。「上司は彼らのパフォーマンスを管理しなければならないだけでなく、慢性的に足をひっぱる彼らは上司のパフォーマンスにとっても問題になる」。

辞めさせる前にまず考えよう

重要なポジションにいるマネジャーを解雇して、代わりに新しいマネジャーを採用するというのは、簡単にはいかない時間のかかる仕事である。リーダー養成コンサルティング会社ジェネシス・アドバイザーズのパートナーで、著書『ハーバード・ビジネス式マネジメント──最初の90日で成果を出す技術』でも知られるマネジメント移行の専門家、マイケル・ワトキンスによれば、解雇のプロセスに痛みやリスクが伴うだけでなく、新しく採用したマネジャーが価値を生み出すようになるには、6カ月以上かかることもあるからだ。

そのため多くの企業幹部が、問題行動にまったく立ち向かおうとしないとボルトンは言う。「彼らは問題を避けて通る。その人物を避け、フィードバックを与えるときも曖昧な言い方しかせず、パフォーマンスの低いこれらの部下の不十分さを補おうとして、往々にしてさらに多くの仕事を抱えることになる。私がかつて一緒に仕事をした、ある企業幹部は、パフォーマンスの低い部下が自分ではなく、別の誰かの下で働くことになるよう、自分が指揮する1000人の部門の組織変更を行った。しかし結局、その選択はどっちつかずということになる」。

パフォーマンスの低いマネジャーを残すか、それとも辞めさせるか。それを決めるにあたっては、不十分なパフォーマンスの背後にある原因を診断し、それに対処する作業を少なくとも1度は試してみることが、自分自身や自分のいる組織、また問題となっているマネジャーに対する上司の責務だと専門家は言う。そのマネジャーが過去に成果をあげていた場合にはなおさらだ。それを実行するために、専門家からの次のアドバイスに従うことを考えてみよう。