彼らの主張は正しいかもしれない

変革を推進するリーダーが犯すおそれのある最大の誤りの一つが、抵抗には何のメリットもないとはなから決めつけることだ。頭に血が上ったときは、人間はえてしてそう決めつけたくなるものだ。

「抵抗している者が、変革に反対するビジネス上のしっかりした理由を持っているかどうかを見きわめることが大切だ」と、戦略コンサルタントで、エゾップ・アンド・アソシエーツ(イリノイ州)の創業者、フィリス・エゾップは言う。「自社の仕事を隅々まで知っている抵抗者は、現行の変革案をどのように修正すれば成功の公算を高められるかについて貴重な知見を提供することができる」。

抵抗者の意見は、厳しいクライアントや慎重な消費者からどのような反対が出てくる可能性があるかを知る一助になる。そのために、抵抗を奨励する企業もあると、パフォーマンス&サクセス・コーチング(フィラデルフィア)の創業者で社長のラリーナ・ケースは指摘する。

抵抗者に公の場で自分の意見を述べさせれば、潜在的な落とし穴を発見できるだけでなく、彼らを強力な支持者に変えることもできると、エゾップは語る。

反対する相手の意見を変えさせるには

抵抗者を転向させるカギは、彼らの反対意見を解体し、彼らの見方を変えさせることにあると、企業研修会社、ストラテジー・ラーニング・センター(フロリダ州)の社長で、『The Art of the Advantage: 36 Strategies to Seize the Competitive Edge(優位への道:競争優位をつかむ36の戦略)』(2003年)という著書もあるカイハン・クリッペンドルフは言う。

クリッペンドルフは自社を変革した経験から次の3つの教訓を引き出している。

(1)強固な信念は変革を妨げる

クリッペンドルフの会社が変革に乗り出したとき、マネジャーの1人が強く抵抗したが、その理由を問いただしたところ、彼は、会社はうまくいっており、変革とは無関係に資源を増やしさえすればさらに業績を向上させられると確信していた。この強固な信念のために変革の利点が見えなくなっていたのである。

(2)信念はつくられる

信念がどのように形成されるかを分析してみると、(a)信念は論理と恣意的に選んだ証拠との心もとない組み合わせに支えられていること、および(b)信念は言葉というかたちで生き続けることが明らかになる。抵抗者の信念を支えている論理や証拠や言葉を突き止めよう。

(3)信念は取り替え可能である

抵抗者の信念の弱点を突き止めたら、変革プログラムのプラスの結果に焦点を当てた言葉や論理や証拠でそれを突き崩そう。抵抗者が障害とみなしているものを、より大きな機会への入り口として描き出すのが、典型的な手法である。

そしてほかのすべての方法が失敗したときは、それにひるむことなく、抵抗者が概して気にかけている問い――私にとって何の得があるのか――に対応するべきだと、専門家たちは語っている。

(翻訳=ディプロマット)