「どんなに能力があっても、企業のフェーズによって、求められる思考、行動特性、資質は違います。安定期ならば“寄らば大樹の陰”で何ごともミスなくこなす人物が評価(ある意味、減点法)されて出世します。しかし安定期に有能だとされる人物が、創業拡大期においても優秀だとは限りません」(武元さん)
創業拡大期に力を発揮するタイプは、衰退・変革期にも手腕をふるうことが多い。たとえばスティーブ・ジョブズ。アップルを創業したが、同社が成長し安定しはじめたら追い出された。しかし経営が危うくなると再びアップルに舞い戻り、一層成長させた。衰退・変革期に必要になるのが、過去からの思考やこだわりを捨てる力(切断力)だ。
「日本でいえば稲盛和夫さんが似たタイプかもしれません。ご存じのように京セラを創業し、さらに最近は日本航空を再上昇させた」(武元さん)
変化を起こす人か、とがっている人か
創業拡大期に力を発揮するタイプの人は、安定期にある会社では「とがっている」「自己主張が強い」と敬遠されてしまう。逆に安定期に有能なタイプは、創業拡大期において変化を起こすことができないし、変化についていくこともできない。通常、安定期にある企業では、何か新しいことを提案しては失敗するようなタイプは評価されないのが現実だ。思い当たる節がある人は、自分がどのタイプなのか、会社はいまどのフェーズにあるのかを考えてみてもいいかもしれない。そしてその結果、いまの会社は合わないと思ったら、転職を考えるのは当然の成り行きだ。しかし武元さんは、「転職には慎重になったほうがいい」という。
すでに述べたように、出世には自分についてきてくれるフォロワーの存在が不可欠である。転職すると、それを得るのが難しくなると武元さんはアドバイスする。
「たとえ転職先に平取として入ったとしても、さらに上にいくには時間がかかります。それよりは、いまの会社で出世する方法を考えたほうがいいでしょう」