「体力はあるが、心も頭も弱い」「すぐ出社拒否する」
大手住宅建設メーカーは体育会系出身の採用者が比較的多い。ここでも同じような現象が発生している。人事課長はこう語る。
「(偏差値)上位校の大学で、しかも体育会の部長をやったという学生を採用しました。ストレス耐性や協調性に加えてリーダーシップという付加価値もあるわけです。営業本部長に『体育会系でもリーダーの経験があるいい学生を採りました』と言うと、期待しているよという言葉をもらいましたが、数カ月後、営業本部長から怒りの電話があったのです。『彼は君が言った性格と全然違うじゃないか。クライアントにちょっと無理難題を言われただけで、それ以来しょげかえって出社拒否をしているけど、いったいどうなっているんだ』と。その後、彼に会って話を聞いたら、体育会の部長といっても誰もやりたくないから彼が推挙されたということでした」
「ストレス耐性」は体育会系出身者の強みのはずだった。どういうことだろうか。前出のIT企業の人事部長はこう語る。
「(他社の)人事担当者との集まりで共通に出る意見が、昔ながらの体育会系の価値は残っているが、メンタリティが基本的に弱くなっているということです。組織に入っても文句を言わずにがまんして働くが、メンタリティが弱いのでいきなり折れてしまうと。僕は“体育会メンタル”には気をつけろと部下にも言っています。体力はあるが、メンタルが弱いために何の予兆もなく、ポキッと折れて突然会社に来なくなる現象が発生します」
人事担当者の間では、体育会系の学生は一般学生と比べて相対的に基礎学力が低いとみられている。それでも、従順で打たれ強ければ、現場で鍛えれば一人前になると信じられてきた。しかし、耐性もなければ基礎学力も低いとなれば、採用するメリットはほとんどないことになる。
採用していい体育会系、採用してはいけない体育会系
メンタルが弱い体育会系学生を見極めるにはどうすればよいのか。住宅建設メーカーの人事課長はこう指摘する。
「体育会系学生には2通りの学生がいます。ひとつは柔道部や相撲部のように大学の合宿所に入って4年間生活する。親元から離れて共同生活をしながら、自分のことは自分でやり、先輩がいろんなことを教わりながら協調性などを学んでいくのです。もうひとつのタイプは自宅から普通に通って朝練の後、授業を受けて、その後に練習し、休日に合宿所で練習する。このタイプは自宅では親が何でもやってくれるし、どちらかといえば自立心に乏しく、体育会系らしさが欠けるところがあります」
部外者から見ると、後者のほうが勉強時間や他の一般学生との交流もあり、文武両道でよいのではと思うが、そうではないらしい。前出のサービス業の人事部長は最近の体育会系学生は「イケメンが多く、おとなしく冷めた学生が多い」と言う。