「今に見ていろ、俺だって」と人を殺す潜在予備軍

この復讐願望に拍車をかけたと考えられるのが、6月9日に新横浜―小田原間を走行中の東海道新幹線の車内で、乗客が刃物で襲われた殺傷事件だ。男性1人が死亡、女性2人が重症を負い、殺人未遂容疑で無職の小島一朗容疑者(22)が逮捕された。そして、事件の翌日、「低能先生はネット弁慶の象徴」「(低能先生が)人を殺せるはずがない」などと揶揄する複数の書き込みがあった。

写真はイメージです(写真=iStock.com/BrianAJackson)

こうした書き込みを見て、松本容疑者は「今に見ていろ、俺だって」と考えた可能性が高い。だからこそ、犯行直後、同じ掲示板に「ネット弁慶卒業してきたぞ」「俺を『低能先生です』の一言でゲラゲラ笑いながら通報&封殺してきたお前らへの返答だ」と書き込んだのではないか。

もちろん、揶揄されたからといって、「俺だって人を殺せる」と凶行に走るのは、短絡的な反応だ。元自衛官の島津容疑者のように「間欠爆発症」の診断基準に該当するわけではないのに、このような反応をしたのは、それだけ松本容疑者が追い詰められていたからだと私は考える。

この2人の容疑者に限らず自分自身の挫折や失敗を受け入れられず、不本意な人生にもんもんとしながら、「今に見ていろ、俺だって」と復讐願望を募らせている人はどこにでもいる。こういう人を追い詰めないようにするにはどうすればいいのか、何が歯止めになりうるのかを真剣に考えないと、同様の事件がまた起こるのではないかと危惧する次第である。

(写真=iStock.com)
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