犬も食わないという夫婦げんか。最終的には夫が「とりあえず謝って」収束するパターンが多い。だが、精神科医の片田珠美氏は「妻は自らの欲求が満たされない状態が続く限り、怒りや恨みを心の奥底に溜め込み、いつでもマグマのように爆発させる」という。「我こそ正義」と昔の話を蒸し返す妻の行動原理とは――。

なぜ夫婦げんかは最終的に夫が妻に謝るのか?

先日、ある男性から「夫婦げんかで謝るのは結局、僕。なぜ、けんかすると最後は男が女に謝るんですか?」と質問された。もちろん、これは夫の言い分である。実際には妻が謝ることもあるのに、夫が「自分ばかり謝っている」と思い込んでいるだけかもしれない。

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ただ、その場にいた他の複数の男性も、「うちもそう。謝るのはいつも自分で、妻は謝らない」と同じ意見だった。それに対して、女性陣からは「妻だって謝るわよ。それに夫の謝り方はおざなりで、心から謝ってないから」と反対の声が上がった。

それぞれに言い分があるだろうし、どちらが謝るかは夫婦によっても違うだろう。ただ、世の男性諸氏の多くは「夫婦げんかで謝るのはいつも男」と思っているようだ。

なぜ、こういうことになるのだろうか? 具体例を挙げながら、その理由を分析したい。

▼「私のこと全然考えてくれてない」……面倒くさいから謝る夫

 以前、本連載でも紹介したことがあるが、30代の男性から聞いた話である。この男性は、息子が入っている少年野球チームのコーチの手伝いをしており、毎週土曜日、朝8時から17時までグラウンドに行っている。もっとも、妻は野球に対してあまり理解がなく、もともと息子が野球チームに入るのもあまり快く思っていなかったようだ。

ある土曜日、夫がコーチの手伝いを終えて、夕方帰宅したところ、妻が明らかに不機嫌な様子で、一向に食事を作る気配がなかった。直接声をかけるのがためらわれる雰囲気だったので、息子に夕食の準備がどうなっているのか尋ねさせると、「作りたくない」という一言が返ってきた。

仕方なく、夫が直接「何を怒っているのか」と尋ねたところ、妻は突如激高して、「毎週、野球なんて自己満足なことばかりして、風呂掃除もトイレ掃除もしてくれない!」と怒鳴りだした。夫は、「風呂掃除もトイレ掃除もしていないのはたしかだけど、普通に言ってくれれば素直に従うのに、そんな言い方はないだろう」という思いにとらわれ、憮然としたらしい。

おまけに、「自己満足」という表現に引っかかった夫が「うるさいことを言うなあ」と言い返したことが、さらに火に油を注ぐ結果になった。妻は「自己満足は自己満足よ。あなたは自己満足の塊よ。私のことなんか全然考えてくれてない」と怒りだし、その日は結局、仲違いしたまま双方寝てしまった。