冷戦状態を長引かせたくない、と謝る夫にイラつく妻

翌日、夫が外出先からメールで妻に謝り、週に一度は風呂掃除とトイレ掃除をすると告げ、一応収束した。しかし、夫としては、罵声の迫力に負けた気がして、何となく釈然としなかった。自分のほうから謝ったのは、これ以上冷戦状態が長引いて面倒くさいことになるのが嫌だったからだという。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Tabee)

何よりも面倒くさいと思ったのは、「自己満足」について蒸し返されることだ。この男性は、少年野球チームのコーチの手伝いを「自己満足」でやっているわけではない、と自分では思っている。実際、コーチから「他にやってくれる人がいないので、ぜひお願いします」と頼まれて渋々引き受けたのだ。

それでも、妻の目には夫が「自己満足」でやっているように映っているのだから、それ以外にも妻から「自己満足」と批判されるようなことがあるかもしれない。そういうことをいちいち蒸し返され、愚痴をくどくどと聞かされるのは、面倒くさい。

もちろん、「決して自己満足でやっているわけではない」と釈明したい気持ちもあるが、それに対しても妻が反論するのではないかと思うと、何を言っても結局は無駄のような気がする。そんな面倒くさいことに時間をとられるくらいなら、自分から謝ってけんかを終わらせたほうがいい。そう考えて、この男性は自分から謝ったという。

同様の理由から謝る男性が実は多いのではないか。決して心から反省して謝っているわけではなく、面倒くさいから、これ以上長引かせたくないから謝る。そういう心情がわかるからこそ、妻のほうも「私の話を全然聞いてくれてない」と腹が立ち、その怒りがくすぶり続ける。そして、機会があるたびに蒸し返さずにはいられない。

妻に蒸し返されると、夫は「またか」と思い、できるだけ早くけりをつけたくて、自分から謝る。こういう場合、夫の謝り方は往々にしてその場しのぎである。そのため、妻が「おざなり」という印象を抱き、悪循環に陥りやすい。

▼過去の話を何度も蒸し返す妻の「被害者意識」

このように蒸し返す妻は、かなり前の話を持ち出すことが多く、夫はキョトンとする。たとえば、

「あなた、あの子がまだ幼いときにおむつを替えるのを手伝ってくれなかったわよね」
「結婚して初めてのお正月にあなたの実家に行ったとき、私は台所できりきり舞いだったのに、あなたは酒を飲んでいただけよね」

といった話を持ち出す。いずれも10年以上も前の話なので、夫としては「どうして今になってそんなことを言うのか」と首をかしげざるを得ない。

もっとも、こういう話を蒸し返す妻からすれば、時間が経っても許せないものは許せない。これは、自分が被害者だと思い込んでいるからだ。第三者の目にどう映ろうと、子育てに協力しない夫、あるいは嫁に台所仕事をすべて押しつける夫の実家の被害者だと妻が思っており、被害者意識を募らせているからこそ、許せない。

しかも、被害者意識が強くなると、自分に正当性があると信じ、「われこそ正義」と思い込む。この思い込みが強いほど、自分に害を及ぼしたと考えられる相手=“加害者”に罰を与えたいという願望が芽生えやすい。こうした願望を精神分析では「懲罰欲求」と呼ぶが、この「懲罰欲求」ゆえに妻はかなり前の話を蒸し返し、夫が謝るまで許さない。