溜め込まれた妻のルサンチマンがマグマのように爆発
もっとも、夫が謝ったからといって、それで妻の気がすむわけではない。この手の妻の胸中には、しばしば「ルサンチマン」が潜んでいるからだ。これはフランス語で「恨み」を意味する言葉であり、普段は表に現れず、ちょうど地中のマグマのように心の奥底に溜め込まれている。しかも、怒りのエネルギーを含んだまま、どんどん蓄積していく。
このルサンチマンの最大の原因は、欲求不満である。自分はこうしたいのにそれができない、自分はもっと認められてしかるべきなのに認められていない……といった欲求不満を抱いているからこそ、被害者意識もルサンチマンも強くなる。
▼妻は欲求不満「とりあえず謝っても問題は解決しない」
ここで忘れてはならないのは、夫婦げんかの原因や蒸し返した話とは別のことに対して妻がもっと根の深い欲求不満を抱いている可能性だ。
たとえば、最初に紹介した夫婦でいえば、夫が風呂掃除もトイレ掃除もしてくれないこと自体に妻は怒っているわけではなく、それ以外の夫の自己満足的なふるまいに不満を募らせている可能性がある。
また、夫がおむつ替えをしなかったことを責めた妻も、そのこと自体に対して怒っているわけではなく、別のことに欲求不満を抱いている可能性がある。出産後も自分の仕事を続けたかったのに続けられなかったこと、あるいは夫の帰りがいつも遅くて子育てに関する悩みを聞いてもらえないことが欲求不満の原因になっているのかもしれない。
こういう場合、夫婦げんかを長引かせたくないとか、妻の愚痴を聞かされるのは面倒くさいとかいう理由から、夫がとりあえず謝っても、問題は解決しない。根本的な原因である欲求不満が消えてなくなるわけではないので、しばらくすると、溜め込まれたルサンチマンがマグマのように爆発する。そして、夫はまた謝らなければならなくなる。
だからこそ、世の男性諸氏の多くは「謝るのはいつも男」と思っているわけだが、妻の欲求不満の原因から目をそらし続けている限り、状況は変わらないのである。