中学生と高校生は「9月1日」、小学生は「11月30日」が最も多い
夏休み後半から休み明けにかけて子どもの自殺が多発する(※)。大人でも、長期の休みの終盤や休み明けに憂うつになったり、会社に行くのが嫌になったりすることはある。このような心理状態になるのは、一体なぜだろうか?
※編集部注:国の自殺総合対策推進センターは「昭和48年度から平成27年度における、通学適齢期の自殺者数に関する分析(速報版)」の公表にあたり、「通学適齢期における直近10年の自殺者数をみると、8月下旬、9月上旬に自殺者数が多く、8月下旬に自殺者数のピークがみられ、地方ブロック間を問わず、8月下旬に自殺者数のピークがみられることが示されました」「9月1日という特定の日に関連した取組に限らず、夏休み後半から夏休み明けの時期にかけて、児童生徒の自殺防止に向けた取組を進めていくことが求められます」としている。
長期の休みの後は「変化」への不安にさいなまれやすい
長期の休みの後に登校する際には、変化への不安にさいなまれやすい。1学期は、つらいと思いながらも何とか登校していた子どもでも、しばらく休んでゆっくりした後に学校に行くとなると、生活環境の変化への不安から動揺する。
これは、通学中心の生活リズムが長期の休みによっていったん崩れ、それを立て直さなければならないことにもよるだろう。平日は毎日通学する生活リズムによってある種の“慣れ”ができ、嫌なことにも何とか耐えていたのに、この“慣れ”が長期の休みの間になくなり、それを取り戻すのに時間とエネルギーが必要になるのだ。
とくに、学校にうまく適応できなくて違和感を覚え、友人関係もギクシャクしていた子どもほど、不安が強くなる。友人関係がうまくいかないのではないか、みんなに無視されるのではないか、成績が落ちて教師からの評価が下がるのではないか、親の期待に応えられず叱られるのではないかといった不安が強くなり、そのことで頭が一杯になる。
このように何らかの変化に伴って精神的に不安定になることは、大人でも起こりうる。「転勤うつ」「引っ越しうつ」という言葉があるように、転勤や転居などの生活環境の変化によって落ち込むことは少なくない。また、「ブルーマンデー」「サザエさん症候群」などと呼ばれるように、日曜日の夕方頃から翌日の通学や仕事のことを考えて憂うつになることもある。
子どもの場合、人生経験が大人よりも少ないので、変化を乗り越えられるだろうかという不安が大人よりも強い。そのうえ、長期の休みで生活リズムが崩れると、休み明けの登校への不安が一層募る。こうした不安が、夏休み後半から休み明けにかけて子どもの自殺が増える一因であることは疑いない。