「このハゲーッ!」。テレビで繰り返し流された豊田真由子氏の罵声。なぜここまで激しくキレてしまうのか。アドラー心理学に詳しい岩井俊憲氏は「劣等感が感情を爆発させてしまう」と指摘する。突然キレる人への対処法を解説しよう――。

職場で、家庭で、街中で、怒りが止まらない

「週刊新潮」の記事で報じられた豊田真由子氏の「このハゲーッ!」「ちーがーうーだーろーッ!!」という元秘書への罵声。その音声はテレビでも繰り返し流された。豊田氏は一連の騒動により自民党を離党し、今回の衆院選には無所属で出馬している。

あの罵声をはじめて聞いたときには、異常な心理状態だと思えた。だが、この状況、意外とあるのではないか。

筆者の家庭では、パソコンや電気機器の配線や操作を、妻の私がほとんどやっている。夫は機械とITが苦手な文系人間だ。つい先日、夫は大好きな歴史番組を録画するために、DVDにHDDのデータをダビングして空き容量をつくろうと、リモコンを操作しては何度も失敗した。教えるこちらはとにかくイラつく。「まずDVDを初期化しなさいよっ」「そのボタンは違う!」「前もやったのに、何度言えばわかるんだよ~ッ!」……豊田氏の気持ちが痛いほどわかる。

次に、前に勤めていた職場の風景を思い出す。数少ない女性営業マネジャーに抜擢された同僚は優秀で、大手のクライアントを抱えていた。連携する他部署に頼んだ仕事がうまくいかず、相手がのらりくらりとかわしたとき、オフィス中に響きわたる声で急に怒りを爆発させた。

「信じられないッ、2回も同じミスをするなんてあり得ない! お客さまになんて説明すればいいの!!」

職場が凍りついた。

キャリア女性だけではない。部下のミスを怒鳴り散らす切れ者男性上司は、枚挙にいとまがない。満員電車の中、優先席で席を譲らない若者にキレ、騒ぎ出す子供に怒り、商品やサービスの欠陥を見つけてはお客さま相談センターにクレームの電話を入れる。キレる人は男女限らずいる。家庭で、職場で、公共の場で、怒りを爆発させるのは、どんな心理メカニズムなのだろうか。