「このハゲーッ!」は相手へのリスペクト不足から出た言葉

また、秘書への怒りはアドラー心理学の言葉で言うと「リスペクト(尊敬)不足」が招いたことだと岩井氏は指摘する。エリートやワンマンな上司の中には、「自分は上の立場だから、秘書や部下は使用人、上役に奉仕して当然」という考え方をする人がいる。リスペクト不足はいろんな局面に表れ、組織ではパワハラ、セクハラ、モラハラにつながる。夫婦間のドメスティックバイオレンスや子供に対する虐待もその一種。リスペクトの対象なら「このハゲーッ!」は出なかったわけだ。

さらに、支配的で利害感覚がものすごく強く、カネ・モノ・人の注目を徹底的に追求するタイプは“ゴー・ゲッター(go-getter)パーソナリティ”と言い、やり手ではあるが周りも傷つける両刃の剣の持ち主である。

さらに岩井氏によると、豊田氏は、「タイプA」パーソナリティの典型だという。AはAggressive(攻撃的)の意味があり、性格面ではAccountable(責任感が強い)、 Ascending attack(上昇志向が強い)、 Ambitious(野心的)、行動面では、Awful(せきたてられる)、Active(行動的)、Annoying(いらだちやすい)傾向だ。こういう性質のタイプは、循環器系の疾患になりやすいという医師の研究がある。心臓病にかかった著名政治家や経営者の顔が思い浮かぶ。それに対して温和なのんびり屋はタイプB(Being)といわれる。

忙しい議員やビジネスマンともなると、スケジュールは分刻みになり、前の予定が狂うと全てに影響してしまう。絶えずせきたてられるように行動するが、そういう状況は本人の気質が招いている部分もある。

「豊田氏の記者会見を見ると、このスクープを最初に報じた週刊誌記者の質問を、いきなり遮ってにらみながらバーッとしゃべり出しました。本人も周りもくつろげない性格の人なんですよ。急げ急げ病です」(岩井氏)

豊田氏のような上司は、政治家だけでなく、特にエリートに多い。このような気質の人は、失敗を非常に恐れる。完璧主義者だから、想定から外れる事態を恐れ、自分を評価する相手を恐れ、自分自身を恐れる。恐れがせきたてる行動の原動力でもあり、攻撃的になり、それが致命傷にもなる。