「今に見ていろ、俺だって」と社会に仕返しする

もっとも、今回の事件は、「間欠爆発症」のせいで怒りを制御できず、衝動的に爆発したというだけでは説明できないように思われる。というのも、島津容疑者の自宅の家宅捜索で、モデルガン十数点とナイフ数点、さらに軍事用のベスト、救急セット、銃やナイフの扱い方や殺害の仕方を指南する書籍などが押収されているからだ。

朝日新聞(6/27)社会面より

こういうミリタリーグッズを収集していたのは、以前から欲求不満と鬱憤が溜まっていて、それを晴らすには社会や世間に仕返しするしかないと思い、「今に見ていろ、俺だって」と見返したいという願望を募らせていたためではないか。つまり、復讐願望を実現するためにミリタリーグッズを収集していたわけである。

それでは、計画性がどこまであったのかという話になるが、事件直前にアルバイト先のファストフード店で店長の注意に激高して店長を複数回殴打し、アルバイトを辞める意向を示して店を飛び出したことが計画的だったとは、私は思わない。むしろ、「間欠爆発症」特有の衝動的な爆発を起こしただけのように見える。

ただ、この爆発による失職によって、「自分はもうダメだ」と思ったことが、以前から心の中で密かに練っていた社会や世間を見返すための計画の実行を後押しした可能性が高い。店を飛び出してから、拳銃強奪の現場となった交番に向かう途中、島津容疑者はLINEで家族に「自分の所持品はすべて捨ててほしい」と伝えているが、このメッセージは、「今に見ていろ、俺だって」と歯ぎしりしながら募らせていた復讐願望を実行に移す覚悟を物語るものだろう。

▼「低脳先生」も「今に見ていろ、俺だって」

この事件の2日前の6月24日、福岡市でIT関連セミナーの講師を務めていた会社員の岡本顕一郎さんを刺殺したとして無職の松本英光容疑者(42歳)が殺人容疑などで逮捕された。松本容疑者も、「インターネット上のやり取りで恨んでいた人物を死なせてやろうと、首や胸を刺した」と供述しているところを見ると、「今に見ていろ、俺だって」と復讐願望を募らせていた可能性が高い。

松本容疑者が面識のない岡本さんを一方的に恨んでいたのには理由がある。ネット上の掲示板で松本容疑者は、他の利用者を「低脳」などと頻繁に中傷していた。その際、岡本さんが掲示板の運営会社に通報し、アカウントを凍結させたことが、犯行の動機らしい。それだけ、松本容疑者はネット上で他人を中傷する「荒らし行為」を繰り返していたわけで、他の利用者たちから「低脳先生」と呼ばれていた。