非核化協議で金委員長が在韓米軍の撤退を求めてくるかもしれないが、これは話の持っていき方次第だろう。

もともとトランプ大統領は大統領選の際には「なぜ韓国を守るためにアメリカの納税者が負担しなければいけないのか」と在韓米軍の撤退を主張してきた。朝鮮戦争の休戦協定の守護者として在韓米軍が存在していることを知らないのだ。

金委員長が「オレたちも非核化するから、在韓米軍も半島から撤収しろ」という言い方をすれば反発して受け入れないだろう。だが、「非核化の監査団を真摯に受け入れるから、進捗次第で在韓米軍の撤収も同時進行で進めてもらえないか」と持ちかけたら、乗っかってくる可能性はある。ディールを好む相手の性格を金委員長が理解できていればの話だが。

在韓米軍が撤収するということは、中国、ロシア、北朝鮮(統一コリア)に対する日米の防衛ラインが佐世保―沖縄ラインになるということだ。米朝首脳会談が実現して、非核化の一テーマとして在韓米軍の撤収が浮上したとき、それが国防上きわめて深刻な問題であることに日本人は気付かされるだろう。かてて加えて、トランプ大統領は日中韓が解放後の北の経済支援をする、と勝手に言っている。拉致問題は話題にものぼらず(話題にしても北が拒否する)、防衛負担はずっしり重く、日本を平和への流れを感知できない国だと非難し続ける北朝鮮を経済援助する。これが、トランプのポチとなった安倍首相が、シンガポール会談の直前訪米で負ってくる国民への贈り物であろう。

(構成=小川 剛 撮影=市来朋久 写真=AFLO)
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