味の素は、2009年4~6月期の連結決算で経常利益が対前年同期比70%増と躍進を遂げた。マーケットのプロを自負する伊藤雅俊社長が読み解く、「リーディング・エッジ」とは何か。

<strong>味の素 伊藤雅俊社長</strong>●1947年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。71年4月、味の素入社。2009年6月、社長。創業100周年を迎える老舗企業で収益力強化に挑む。発展途上国での「栄養不足」市場と国内の「栄養過剰」市場の両面作戦を展開している。
味の素 
伊藤雅俊社長

1947年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。71年4月、味の素入社。2009年6月、社長。創業100周年を迎える老舗企業で収益力強化に挑む。発展途上国での「栄養不足」市場と国内の「栄養過剰」市場の両面作戦を展開している。

自分が感じた実感や共感をバラバラに分解し、再構築する。これが何十年もマーケット部門にいた私が自分に課してきた訓練です。

もうこんな失敗をする人はいないでしょうが、以前はお好み焼きにマヨネーズをかけるとき、マヨネーズの容器の絞り口が大きかったので、勢いよく飛び出した大量のマヨネーズでお好み焼きがグチャグチャになったのです。そのような失態をしたのは私だけではないはず。

当然、コツをつかんで慎重に出せば、適量が出てくるので、当時そのことを問題にする人などいませんでした。世の中のほとんどの人は、要領よくマヨネーズを出すので、不満を口に出すようなことはありません。家庭を守る主婦はマヨネーズを大量に使う料理をするので、逆に小さい絞り口の容器を作られると不便に感じたかもしれません。

私は自分の失敗体験と現状を分析し、大きい絞り口も残しつつ、赤いキャップの部分に小さい絞り口を作って、併用できるようにしました。これなら、用途や料理に合わせて自由に選べます。

マヨネーズの賞味期限が記されたビニールの包装を捨ててしまうと、賞味期限がわからなくなってしまって困る、という投書がきたことがありました。普通の人なら一笑に付して、この投書はゴミ箱行きになってしまうところでしょう。包装を捨てなければいいのですから。あるいは、たった1枚の投書ではなく、もう少し投書がきたら考えようとなってしまうかもしれません。