2008年12月のマザーズ上場以来、SNS「GREE」の会員数が加速度的に増加している。上場の時点で800万人だった会員数は、2009年4月には1000万人の大台へ。さらに9月には1500万人を突破するに至った。釣りゲーム「釣り★スタ!」やガーデニングゲーム「ハコニワ」など、携帯ゲームを前面に打ち出したテレビCMを見ない日はなく、2009年6月の経常利益も対前年比7.1倍という数字を打ち出している。

もともとは田中良和社長の個人サイトとして始まったGREEが、携帯ゲーム配信とSNSを融合させたサービスを始めたのは3年前。会員同士が交流するSNSのほか、ゲーム内のアイテムをポイントの購入によって入手できるシステムなど、ユーザーの支持を集めてきた。

田中社長がこのモバイルサービスへの方向転換を成し遂げ、SNS大手の一角へ同社を成長させた秘訣はどのようなところにあったのだろうか。

現在の「生」の声を過去の歴史と照らすべし

<strong>グリー 田中良和代表取締役社長</strong>●1977年、東京都生まれ。日本大学法学部卒業後、ソニーコミュニケーションネットワーク入社。2000年、楽天入社。04年2月、「GREE」を個人で立ち上げる。同年12月、グリー株式会社を設立し、社長に就任。
グリー 
田中良和代表取締役社長

1977年、東京都生まれ。日本大学法学部卒業後、ソニーコミュニケーションネットワーク入社。2000年、楽天入社。04年2月、「GREE」を個人で立ち上げる。同年12月、グリー株式会社を設立し、社長に就任。

イノベーションを生み出すために重要なのは、突然何かを思いつくことではなく、変化の兆しに気づくことです。そのためには他社のサービスを研究するよりも、やはりユーザーの声に耳を傾けるのが第一。グーグルはヤフーを研究し尽くした結果、検索エンジンを始めたわけではないでしょう。また、ツイッター(ユーザーが短文を投稿し合うミニブログ)もグーグルを研究して生み出されたわけではないはずです。多くの人たちに受け入れられるイノベーションが生まれるのは、常にユーザーの求めるものが何なのかを考えた結果です。ただし、ユーザーの声に耳を傾ける姿勢とは、必ずしもその声をそのままサービスに反映させていくことだけを意味しません。むしろ、「現在」の生の情報である「声」を、その業界・分野の「過去」の歴史と照らし合わせていく作業が大事なのです。

例えば、現在のモバイルサービスを始める以前、PCよりも携帯電話を中心に利用しているユーザーの声を集めると、「パソコンは起動に時間がかかる」「寝ながらできない」「画面が大きすぎる」といったものが次々に出てきました。同じころ、ゲーム業界ではニンテンドーDSやPSPが流行し、家庭用ゲーム機全盛の時代が終わりを迎えようとしているかに私には見えました。ゲームは家でやるものであるとか、大きな画面でプレーしたいという「常識」が変わり始めていたわけですね。