値段を切るだけのセールスマンはいらない
――景気は冷え込み、営業環境は依然として厳しい状況です。金川社長はいま「営業マン」にどう助言されるでしょうか。
私は神様ではありません。目の前に、「どうしても売れない。どうしたらいいだろうか」と困り果てた営業マンがいても、どう声をかければいいのかはわかりません。しかし酷な言い方になりますが、こうした不況期にこそ平時の努力の結果が表れるのです。
見落とされがちな点は、不況期には我々と同じく、相手も困っているということです。相手の立場に立つ営業ができていれば、そのことにはすぐ気づきます。そうすれば、友人に接するように、困った相手を助けられるはずなのです。
――ご指摘のように、ここ数年、「相手の気持ちがわからない」と悩む営業マンが増えています。
営業の基本は担当者が商品の特色を十分よく理解すること。そして、それを十二分に需要家へ理解させることです。
商売は人と人とのつながりです。メーカーの製品は大きく「特殊品」と「汎用品」にわけられますが、品質で差別化しづらい汎用品は価格競争に陥りがちです。それでも汎用品を他社より高い価格で売ってくる営業マンがいます。そういう人間は取引先に「多少の差であればこの人から買いたい」と思われているはずです。
――たしかに、成果の出ない営業マンから、「価格で折り合えない」という相談をよく受けます。
私はいつも「値段を切るセールスマンはいらない」と公言しています。営業マンの仕事は商品を売ること。ただし最高の価格で売らなければいけない。それさえできれば、法を犯さない限り、どんなタイプの人間でも構いません。
「改革開放」政策を進め中国の近代化を成し遂げた政治家、小平はこういう言葉を残しています。「黒い猫でも、白い猫でも、ねずみを捕るのがいい猫だ」。もちろん小平は営業をやったことはないでしょう(笑)。しかし、やさしい言葉で、営業の真理を言い当てています。できる限りのいい条件で売ることが、会社に対する一番の貢献。結果を出せば、手法は問われないのです。