社長の言う通り、だけではダメ

ストライプインターナショナルの宣伝部部長中村雅美さんは、石川社長との仕事では、とにかく柔軟でいる、ということを心がけたという。

「言うことがどんどん変わるので(笑)。それこそ1分後に言っていることが変わることもある。極端に言えば。そういうときに、どれだけ『え~っ?』とならずに、目標とするゴールに向かって前向きになれるか、です。

そう心がけていても、「頭が固い」と石川社長から言われることがあった。

「ついつい反論してしまったからだと思います。なので、できるだけ柔軟に考えないと、と思っていました」

ただ、言われた通りにとにかくやればいい、といいうのとはまた違う。

「社長が間違えることもあると思うんです。一方で、その通りにしなきゃいけなかったこともあるんですけど(笑)。ただ、言う通りにやっちゃうと、社長から見てもダメなときもあるわけですね。『言った通りにしかしないなぁ』と」

逆に、物申して意見を言う人は、石川社長にとっても本当はウエルカムだという。

「考えがあったら、ちゃんと言ってほしい、という感じですよ。そこはちゃんと自分の意見を持っていたほうがいいと思います」

こうしたバランス感覚を、仕事をしながら身につけていったのだ。

トップのビジョンにどうやれば一番早く届くか

カルビーの海外事業本部本部長、笙(しょう)啓英さんは、こんなことを語っていた。

「気をつけているのは、不必要な情報は入れないことです。不必要というより、無駄な情報です」

時間をもらって相談するときの話だ。松本氏が黙っていれば、特に問題はない。おや、と思ったら意見や指摘、質問が来る。

「松本が話したいことがあるときは、口を挟んではいけないですね(笑)。全部、出してもらって、それを受け止めてどうするか、というのが、僕の仕事ですから。自分の思いというのも当然あるんですけど、やるときにトップのビジョンと合っていないと意味がない。ビジョンに対して、自分の持っているやり方で、どうやったら一番早く届くのかな、というのがシンプルに自分の仕事だと思っていますから」

経営トップをよく見ているのだ。その上で、自分のアクションを起こすのである。