ビジネス書の著者は多くが社長だ。だが読者の多くは社長ではない。読者にとって有用なのは「社長の仕事術」より「社長のまわりの仕事術」なのではないか――。ブックライターの上阪徹氏は、そうした問題意識から『社長の「まわり」の仕事術』(インプレス)を書いた。取材を通じて上阪氏が実感したという「社長が“そばに置きたい”と思う人の共通点」とは――。

一流の社長を支える「まわり」にこそ学ぶべし

たくさんのように刊行されるビジネス書。その多くの著者になっているのが、経営者=社長である。自身の経験やスキルをベースに本を書いているわけだが、考えてみれば、ビジネス書の読者はすべて社長なのかといえば、必ずしもそうではない。

社長になる人はひと握り。ビジネス書の読者の多くは、むしろ社長でない人のほうが多いと思うのだ。多くは、エネルギッシュに動く経営者に日々、振り回され、ビジョンを実現していこうと奮闘している人たちなのではないか。

そうした人たちが、どんな意識で、どんなスキルで、どんな仕事術で仕事をしているのか。もしかしたら、そんな本があれば、より多くの人にダイレクトに役に立てるのではないか……。

こんな考えのもと、生まれたのが、拙著『社長の「まわり」の仕事術』(インプレス刊)である。カルビー・松本晃氏、DeNA・南場智子氏、ストライプインターナショナル・石川康晴氏、隈研吾建築都市設計事務所・隈研吾氏、中川政七商店・中川政七氏、サニーサイドアップ・次原悦子氏の6人の経営トップのまわりで仕事をしている、13人にロングインタビューさせてもらった。職種も、注目事業や海外事業の責任者、会長室、広報、CSR、社長、デザイナー、IT担当執行役員、社長室副室長、創業メンバーなどさまざま。

上阪 徹『社長の「まわり」の仕事術』(インプレス)

かつてなかったコンセプトの本、まさに知りたかった仕事術だ、などと話題にしていただいているのだが、今回は13人のインタビューの中から、「社長が“そばに置きたい”という人の3条件」をピックアップしてみたい。

13人はいずれも、経営トップからの厚い信任を得ているからこそ、重責を与えられている。社長が“そばに置きたい”と考えた理由があるはず。そんな視点から見てみると、13人の話の中から3つの条件がすんなり浮かんできた。

CHECK▼自分の役割を認識できているか?

まずひとつ目は、「自分の役割が認識できている」ことである。経営トップのそばで仕事をするということが、どういうことか、よくわかっているのだ。端的にいえば、経営トップのやりたいことをいかに実現に近づけられるか。そこにこそ、取り組もうとする。

ところが、逆のことをしてしまうケースが少なくない。典型例が、否定から入ってしまうこと。優れた「社長のまわり」は、そんなことはしない。