「はとバス」外国人ツアーで一番人気のガイドに同行。彼らの興味を引く話題と、ジョークに仕立てる技を聞いた。

 近年、東京の観光名所でますます多くの外国人を見かけるようになった。それとセットで目に入るのが、観光バス会社の最大手「はとバス」の黄色い車体だ。同社では現在、外国人向けのバスツアーを数多く設け、人気を博している。そこで活躍しているのが、通訳案内士の資格を持つツアーガイドだ。訪日観光客に付き添い、外国語で日本の魅力を紹介するプロである。はたして、どんな話題で場を盛り上げているのだろう……。百聞は一見にしかず。はとバスで、外国人の間で「抜群に話が面白い」と評判のガイド、井上淳さんが担当するツアーに同行した。

はとバスツアーガイドの井上淳さん。

参加したのは「東京モーニング」。朝9時に浜松町バスターミナルを出発して、東京タワー、皇居、浅草寺を見学し、正午過ぎに解散するコースだ。ある晴れた平日、大型観光バスの車内はほぼ満席で、英語が飛び交っていた。バスが走り出した途端、マイクを手にした井上さんがまずは自己紹介。

「僕の名前はアツシ・イノウエ。フランクにファーストネームで呼んでくださいね。ん? ア・ツ・シは長い? じゃあ“スシ”でOK。でも、“天ぷら”とは呼ばないで」 

そう言った瞬間、車内は笑いの渦に包まれた。おなじみの日本食を話に盛り込むことで、一瞬にして乗客の心をつかんでしまったのだ。その後も井上さんは、各名所の魅力や日本の文化を伝えながら、軽妙なトークを連発。東京タワーを指さしながら「あれは何度もゴジラに壊されました」、わが国の宗教観を語りながら「毎年12月24日、日本人は1日限りのクリスチャンになるんです」等々。最後まで乗客の気を引き、笑わせ、飽きさせることがなかった。さすが百戦錬磨のプロ! と感心する半面、正直なところ、なぜウケているのか謎だと思う話もあった。外国人にはどのようなネタが受けるのだろう。笑いを誘うポイントはどこにあるのか。後日、井上さんに話を聞いた。