2017年5月、孫正義は世界の10兆円を超えるソフトバンク・ビジョン・ファンドの創設を発表した。世界最先端の技術に積極的に戦略的に投資をするという。これまでもヤフー、ボーダフォン、ARMと常識を覆す投資・買収をしてきた稀代の投資家の成功法則とは――。
読むだけで役立つ、孫正義の投資法
時価総額10兆円弱で日本4番目の時価総額を誇るソフトバンクグループ(2017年9月4日時点)。その主要事業で、創業者・孫正義氏が自ら起こした事業はほとんどない。その多くがベンチャー企業への出資や買収などで既存のビジネスに投資し、成長させてきた。そんな孫氏の投資手法をSBIインベストメントの元ファンドマネジャーで、現在日本創生投資の三戸政和社長が解説する。
私がビジネスパーソンのみなさんにご提案しているのは、50代からの企業経営です。それは、出世していまの会社の社長になれというのではなく、起業をしてくださいといっているのでもなく、「世の中にすでにある企業をご自身の手で買収して社長となり、第二の人生として会社経営をしてください」という提案です。
私はいま、日本創生投資という会社で中小企業を対象にした事業承継・事業再生ファンドを運用しています。2005年から11年まで、ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)という会社にいました。孫正義さんと北尾吉孝さんがつくったベンチャー投資ファンドの運用会社です。
展示会と出版社を買収した理由
私はそのファンドマネジャーとして、日本とシンガポールで、1000社を超える企業の発掘、株式公開支援、M&A、企業再生などを行いました。当時孫さんは経営に関わっていませんでしたが、彼の投資哲学は残っていました。また運営ファンドの投資家であった孫さんの研究をさせていただきました。
そうした知識から、中小企業を買う、または株式投資をする際にポイントとなる点をお伝えします。
企業への投資、中小企業の買収を想定したとき、まず孫さんから学ぶべきことは、「最新のビジネスモデルを知る」ということです。その分野や企業に先んじて投資することで、先行者利益を得られるからです。
1990年代、「これからはインターネットの時代だ」と思った孫さんは、アメリカのコンピュータの展示会そのものを買収したり、コンピュータ雑誌の出版社を買収します。有望なベンチャーは展示会に出展するはずだし、雑誌も取り上げるからです。こうして情報を得て企業投資をしていったのです。さらに成功を収めたのは自ら「タイムマシン経営」と名付けた経営手法です。