引退後のそば屋は、ほぼ成功しない

ソフトバンクは96年に米ヤフーに出資して合弁でYahoo! JAPANを立ち上げました。米国のビジネスモデルを日本に持ち込んだのです。米国で成功したビジネスモデルは数年遅れで必ず日本にもやってくると見込み、日米のタイムラグを利用して先行者利益を得たのです。

じつはこの「タイムマシン経営」は、日本の東京と地方でも適用できます。新しいビジネスでは、東京と地方にはいまだにタイムラグが存在します。大事なのは、最先端の情報を海外のSNSを見るなどして入手することなのです。

孫さんの買収・投資先の企業選びで参考になるのは、実業と関連した企業にするということです。ソフトバンクはYahoo! JAPANを立ち上げた後、Yahoo! BBをスタートさせてインターネット通信を開始し、ボーダフォンとウィルコムを買って携帯電話・PHS産業に参入して業態を拡大させてきました。

その何が参考になるかというと、孫正義をもってしても、まったく知見のない産業には闇雲に手を出さないということです。たとえばソフトバンクがいきなり車メーカーを買ったり、レストランを始めたりはしないのです。みなさんも、もし中小企業を買収するのであれば、まずは自分がこれまでやってきた事業か、あるいは、そこに隣接する領域で勝負してください。

メーカーや銀行に勤めてきた人が、「夢だから」とそば屋などの飲食店を始めるのはおすすめできません。飲食業はあらゆる産業のなかで最も難しいビジネスの1つ。市場規模は約25兆円と大きいですが、最大手のゼンショーグループで売上高は約5400億円。たった2.2%しかシェアがないのです。競争や出入りが激しく失敗するリスクが高い分野に飛び込む必要はないのです。

▼外食産業・飲食店には投資しないこと
○ 一見、市場は小さい、競争相手が少ない、大当たりの可能性あり
× マネされやすい、新規参入が多い、人材が獲りづらい

ガリバーになれる分野に一気に投資!
1990年代、インターネットの時代が来ると読んだ孫さんは、関連銘柄をのきなみ買い取った。代表的なものが米国Yahoo!への投資だ。そこからは自分の行っている実業に近い通信関連分野やコンテンツ事業に進出することでポートフォリオを拡大し、1人勝ちのインターネットの世界で先行者利益を得ることができたのだ。

じつはいま、個人で会社を買収することは難しいことではありません。ためしにインターネットで検索してみてください。中小企業の売買情報を一覧できるサイトがいくつも出てきます。案件のなかには、500万円程度で買えるものも多くあります。

「実際に会社を買えたとしても、失敗が怖い」と思うかもしれませんが、それは少し前の話。いま、中小企業の事業承継を促進させるため、銀行が社長個人に連帯保証を求めないルールになっています。前社長が連帯保証人になっていても、うまく銀行と交渉すればあなたは連帯保証人になる必要はありません。