7月18日、ソフトバンクグループによる英国の半導体設計大手ARM(アーム)・ホールディングスの買収が発表されました。「売上高約1800億円の企業に対して3.3兆円の買収額は高すぎる」「携帯電話事業とのシナジーがない」といった否定的な見方もあります。

ARMスチュアート・チェンバース会長(左)は元日本板硝子社長。(写真=時事通信フォト)

なぜ、ソフトバンクはこれほどの巨額買収を行ったのでしょうか。それは、産業の「レイヤー構造化」という考え方で読み解くことができます。

昨今、さまざまな製品分野でデジタル化が進んでいますが、デジタル化は3つの変化をもたらします。自動車産業を例に説明しましょう。

(1)モジュール化……複数の異なる製品で同じ部品を使用できるように共通(標準)化すること。自動車の場合、プラットフォーム(車台)をモジュール化して複数の車種で共通化することにより、開発にかかるコストやリードタイムを削減できます。近年、部品の電子化が進むにつれ、モジュール化はさまざまな製品に広がっています。

(2)ソフトウェア化……最近の自動車には、衝突軽減ブレーキなど、センサーとソフトウェアを組み合わせることによって運転を制御する技術が組み込まれています。テスラモーターズの電気自動車では、自動車全体の制御がOSによって行われています。

(3)ネットワーク化……自動車には早くからテレマティクス(移動体通信によるリアルタイム情報提供システム)が導入され、交通状況に基づき最適なルートを案内できるようになっています。近い将来には、ソフトウェア化と絡み合い、自動運転が実現するでしょう。

こうした製品のモジュール化、ソフトウェア化、ネットワーク化によって、産業のレイヤー構造化が進むと私は考えています。レイヤー構造を持つ産業では、レイヤーが積み重なって製品やサービスのシステムが出来上がります。