破竹の29連勝──。昨年、日本中が棋士・藤井聡太の連勝記録に釘づけになった。そして今年。藤井氏は最年少の六段として「C級2組」に臨み、10戦全勝で「1期抜け」をはたした。15歳にしてプロの世界で渡り合える実力は、いかにして身についたのか。才能を育んだ背景に迫った――。

※本稿は、「プレジデント」(2017年10月2日号)の掲載記事を再編集したものです。藤井さんは2018年3月現在六段ですが、記事内では掲載当時のまま四段としています。

短い時間で、効果を最大限に

「一流棋士の勉強法には共通した部分が見られます」と分析するのが、将棋ライターの鈴木宏彦氏だ。鈴木氏によれば、将棋の成功者はチャンピオンタイプとリーダータイプの2つに分かれる。チャンピオンタイプは、自分の能力向上に重点を置き、黙々と努力して結果を出すタイプだ。

プロ棋士 藤井聡太 
ややあどけない表情は12歳、奨励会二段に昇段した当時の写真。半年後には三段、その1年後には四段と、プロへの階段を一気に駆け上がった。

一方、先頭に立って大勢の人を引っ張っていくのが、リーダータイプ。典型は、将棋界を長年支えた大山康晴十五世名人や、羽生善治二冠。そして藤井聡太四段は(当時、現在は六段)もいずれはこちらに属する可能性が高いという。リーダータイプは社会的な立場を自分の実力の1つと認識しており、広報活動や関係者との付き合いなど、将棋以外に時間を割くことも苦にしない。そして将棋以外の時間も、自分の対局のエネルギーに変えていく。

「リーダータイプは忙しいため、短い時間で効果を最大限に発揮する勉強を心がけています。藤井四段は今やネームバリューで将棋界を引っ張る存在である一方、中学生なので授業に出なくてはいけない。リーダータイプのように限られた時間内で効率よく成長する方法を常に考えながら今に至ったわけで、その苦労は将来も必ず役に立ちます」(鈴木氏)