※本稿は、5月29日、三井不動産リアルティ福岡支店と西日本新聞社の共催により行われた公開対談と、対談後にプレジデントオンライン編集部が独自に行った両氏へのインタビューをもとに構成した。
2004年から言い続けている「めざせ世界一」
【後藤】 「めざせ世界一!」というホークスのスローガンの言い出しっぺは、もちろん、うちの孫正義(ソフトバンクグループ社長)です。2004年にダイエーから球団を買収した時点から、このスローガンを掲げています。最初は地元・福岡の方々も違和感があったと思います。「福岡のホークス」として応援してきたのに、それがいきなり「世界」ですから。
いまでも、「めざせ世界一!」というと笑われることがありますが、孫さんは本気の本気です。つまりわれわれはメジャーリーグとガチンコ勝負するところまでレベルを高めなければいけないんです。
【佐山】「めざせ世界一!」というのは、やっぱり孫さんらしいですね。孫さんでないと言えませんね。ふつう、世界一というスローガンはなかなか出てきませんよ。
【後藤】私は孫さんと仕事を始めて17年になりますが、まずひとつ言えることは、孫さんのやることは、外からは一見乱暴に見えるんじゃないかと思うんです。たとえばすごい金額の事業買収をパッと決めてしまう。そのお金を集めてくるのが僕の仕事なので、それがどれだけ大変なことかはよくわかっています(笑)。それでも、僕が17年間、孫さんについていけているのは、彼が本当に純粋だからです。
【佐山】それ、わかります。
孫正義の純粋な「事業欲」の強さ
【後藤】人間には食欲とか睡眠欲とか、さまざまな欲がありますが、孫さんの場合は純粋な「事業欲」だと思います。名誉欲や金銭欲ではないのです。一見乱暴に見えると思うのですが、自分の決断が何をもたらすのかが孫さんには見えていて、それに向かって純粋に考えた結果なんです。それがわかるので、僕らもついていけるんですね。
ソフトバンクグループがこれだけ成長できているのも、こうした孫さんの意思決定が徹底しているからです。たとえば成功確率が10%の買収案件があるとします。成立確率は10%しかない。その代わり、成功すれば10倍、100倍になるビジネスです。すると、確率が10%という時点で普通の企業経営者は検討すらしません。リスクが大きすぎるからです。
しかし孫さんは、10%でも成功確率があるなら真剣にチャレンジします。それをやり続けると、10回やれば1回はあたるんです。その成功例が「ヤフー」や「アリババ」です。孫さんは絶対にあきらめないんです。
【佐山】 たとえば北里大学 特別栄誉教授の大村智博士は、ノーベル生理学・医学賞を受賞したときに「ラッキーでした」とおっしゃっています。大村博士は静岡県伊東市のゴルフ場の土から、画期的な薬につながる微生物をみつけました。微生物がみつかったことは、確かにラッキーです。しかし、大村博士はこの微生物をみつけるまで、いろいろな場所の土から何千回とサンプルを採取されていたと思うのです。
微生物のみつかる可能性が1%だったとしましょう。1%しか可能性がないことは、ほとんどの人は手を出しません。でも本当は、1%でも可能性があれば挑戦し、やり続けていると、100回やれば成功率の期待値は100%になります。1回できてもおかしくないことになります。つまり、難しいことに挑戦するか、それを何度もやり続けるかどうかが重要なんです。ましてや確率10%なら、孫さんは「できた」と思っておられますよ(笑)。
【後藤】そうかもしれません。