日本の国民食・カレーライス。そんなカレー作りに欠かせないカレールウの市場で30%超という驚異的なシェアを持つのが、「ハウスバーモントカレー」だ。なぜ長年にわたって愛され続けているのか。“リンゴとハチミツ”という隠し味だけではない競争戦略とは――。
割れたリンゴにとろりとかかるハチミツのパッケージでおなじみ、バーモントカレー(画像提供:ハウス食品)

家庭内夕食“1位”はカレー

カレーライスはラーメンと並び「国民食」といわれるが、立ち位置は微妙に違う。外食需要が多いラーメンに対して、カレーは「家庭の夕食のおかず」として事実上の1位なのだ。

実際のデータで見ると、2017年4月から9月までの「食卓に上った回数の多いおかず」ランキングは、1位が野菜サラダ、2位を野菜炒めとカレーライスが競っていた(「ライフスケープマーケティング」調べ)。野菜サラダはおかずの主役ではない。野菜と何かを炒めれば野菜炒めになるが、幅が広すぎて料理の固有名詞とは言い難い。そう考えると、カレーが家庭料理メニューの王座と言っていいはずだ。ちなみに同調査でラーメンは18位だった。

家庭用のカレーライス市場は大きく2つに分けられる。1つは固形ルウタイプの「即席カレー」で市場規模は約503億円(2016年度。ハウス食品調べ)。もう1つがお湯やレンジであたためる「レトルトカレー」だ。こちらの市場規模は約539億円(同)だ。

「個食」が進みレトルト市場が成長中

「ここ数年で、レトルトカレー市場が非常に伸び、即席カレー市場と逆転しました。これまで主に家事を担当していた主婦の方が働くようになり、以前よりも調理にかける時間が限られるようになった。1人暮らしの世帯が増え、また家族で暮らしていても『個食』が進み、レトルトはそれぞれの味が楽しめて手間がかからない。味も多彩でおいしくなったからと考えています」

ハウス食品の船越一博氏(事業戦略本部・食品事業一部ビジネスユニットマネージャー)はこう説明する。即席カレーで圧倒的な強さを誇る同社は「バーモントカレー」「ジャワカレー」「こくまろ」の看板ブランドを持ち、同市場での16年度の売上高は約380億円だ。今回はその中でも驚異的に強い、市場シェア約32%の「ハウスバーモントカレー」を紹介したい。