そんな中で1960年に発売した「ハウス印度カレー」は、それまでの主流だった粉末ではなく固形タイプのルウを使用。これ以降、固形ルウタイプが即席カレーの主流となった。そして当時は「カレー=大人向けの辛い食品」というイメージが強かったため、「女性や子どもに向けた甘口のカレー」で提案し、当時の他社商品よりも10円高い60円で販売したのが「バーモントカレー」だったのだ。

「全社一丸」で展開し、少し後にブレイク

バーモントカレーが現在でも強いのは、発売時に徹底して完成度を高めたからともいえる。当初からこだわるのが、前述したリンゴとハチミツだ。

1963年、新発売当時のパッケージ。(画像提供:ハウス食品)

「当時の浦上郁夫副社長(後の2代目社長。85年日航ジャンボ機墜落事故で死去)を中心に検討を行い、『カレーは辛いもの』というイメージが当時は一般的だったことと、夕食のメニューは主婦が子どもを意識して決めることから、ターゲットを子どもと若い女性にしぼりました。そこでマイルドなカレーをつくるため、開発当時は乳製品や果物などいろいろ試し、“リンゴ”と“ハチミツ”にたどり着きました」(船越氏)

そして、米国バーモント州に伝わる“リンゴ酢”と“ハチミツ”を使った「バーモント健康法」が当時ブームになっていたことにヒントを得て、「バーモント」の名前がつけられた。容器トレーも、チョコレートのような銀紙包装で「ニオイがつく」と不満があった従来型から、ニオイを遮断した現在の原型となるトレーを採用。パッケージには食品で初めてグラビア印刷を採用した。営業でも店頭デモンストレーション、宣伝カーなども実施した。当時は小規模だった同社にとって、まさに「全社一丸」の活動だったのだ。