なぜ演説から「トランプ節」が消えたのか
11月8日に韓国で行われたトランプ米大統領の演説は、実に興味深い内容だった。
どこが興味深いのか。それは米国が軍事的圧力を強めて北朝鮮と正面から対峙する決意を示しながらも、いつもの挑発的なトランプ節が封印されていたからである。「ロケットマン」という揶揄の言葉も使われなかった。しかも北朝鮮に対し、「明るい未来について話す用意がある」とまで語り、対話への道にも触れた。
トランプ氏は「小さな子供たちが栄養失調に苦しんでいる」「国の予算の多くが独裁者のために使われている」などと述べ、北朝鮮の国民の人権が侵害されている実態を詳細に説明し、拉致被害にも言及した。
これは人権問題を理由に第三国が軍事介入する可能性を示唆した発言であり、北朝鮮への人道支援を表明している韓国の文在寅政権に対する揺さぶりとも受け取れる。
反対にトランプ氏の訪問を受けた韓国側の対応は、日本にとってひどいものだった。文氏はトランプ氏との夕食会に米国で日本批判を繰り返してきた元慰安婦を招き、料理には韓国が領有権を主張する島根県の竹島の韓国名を冠した「独島エビ」を出した。特別なエビではなく、いわゆる甘エビの一種だ。米国と蜜月状態の日本に対する牽制なのだろう。
韓国は「非常識も甚だしい」と読売
新聞各紙はこうした韓国の対応について、読売、毎日、日経の社説が批判している。
11月9日付の読売社説は「文氏は、トランプ氏との夕食会に元慰安婦を招いた。島根県・竹島の韓国名を冠した『独島エビ』を使った料理も供された」と書き、こう非難する。
「日本政府が韓国に抗議したのは当然だ。第三国との外交の場で、歴史問題や領土を巡る自国の一方的な主張をアピールするのは、非常識も甚だしい」
この非難に沙鴎一歩も同感である。韓国の振る舞いは実に大人げない。
毎日社説は「対北朝鮮政策では日米韓の連携が基本だ」と指摘し、問題の韓国の行いに対し「疑問が残った。日本へのけん制と受け取れるからだ。菅義偉官房長官は記者会見で不快感を表明した」と書き、「日米韓の足並みを乱そうとする北朝鮮を利するようなことは避けるべきである」と主張する。
日経社説も「北朝鮮をめぐる日韓や日米韓の連携に水を差しかねない対応で、極めて遺憾だ」と批判している。
毎日社説も日経社説も正論である。東京新聞は慰安婦問題を肯定的にとらえることがあったからなのか、11月9日付の社説では韓国の問題に触れてない。