米国のトランプ大統領が、就任後初のアジア歴訪を終えた。日本、中国、ベトナム、フィリピンと10日間で5カ国を回った。米大統領のアジア歴訪としては過去最長だったが、その中身ではトップとの「1対1外交」が目立った。セールスマンとしての手腕は巧みだが、米国大統領としてそれいでいいのか――。
みんなでわいわいやるのが苦手?
米国のトランプ大統領が、就任後初のアジア歴訪を終えた。日本から、中国、ベトナム、フィリピンと11月5日から14日にかけて、10日間で5カ国を回った。米大統領のアジア歴訪としては過去最長だった。
訪問国のひとつのベトナムでは、TPP(環太平洋経済連携協定)に参加する11カ国の首脳会合が開かれた。米国はTPPから撤退しているが、トランプ氏もその会合に参加し、アジア政策について初の演説を行った。
しかしこの演説でトランプ氏は「米国第一主義」を主張し、TPPを無視した2国間協議を強調した。
どうやらトランプ氏はみんなでわいわいやるのが苦手で、1対1の交渉が好きらしい。支援者一人ひとりに直接、呼びかけることができるツィッターを駆使するのもその表われだろう。
今回のトランプ外交は何だったのか。TPPを扱った社説を読み解きながら考えてみたい。
「トランプを誘い込んだ」と安倍首相を褒める読売
「日本の戦略と連携してアジア太平洋地域への関与を強め、域内の安定に貢献していく意思が示された」
「トランプ演説」というテーマで、見出しを「具現化が問われるアジア戦略」と付けた11月11日付の読売新聞の社説はこう書き出す。
「トランプ米大統領がベトナムで、アジア政策に関する演説を行った。アジア各国の民主化と法の支配、経済発展を称賛し、『インド太平洋地域の全ての国々との関係を強化し、繁栄と安全を推進したい』と呼びかけた」
こう解説したうえで、次のように評価する。
「安倍首相は昨年、『自由で開かれたインド太平洋戦略』を打ち出している。トランプ氏がこの理念に共鳴し、価値観外交に初めて踏み出した意義は大きい」
さすが安倍政権擁護の「御用新聞」といわれるだけはある。安倍晋三首相がトランプ氏をアジア戦略に誘い込んだと褒めている。